『MUSIC AWARDS JAPAN -2025/KYOTO-』。
主要6部門 最優秀アルバム賞。
ノミネートは下記の5アーティスト。
▷ Mrs. GREEN APPLE 『ANTENNA』
Mrs. GREEN APPLEの活動再開後初のフルアルバム。
バンドの新たなフェーズを象徴するアルバムで、よりジャンルにとらわれない自由な表現、ポップでキャッチーな楽曲の増加、大森元貴のヴォーカルや演奏技術の変化を感じとることができます。
技術的な挑戦を越え、楽曲をどう表現するか、どう伝えるかに拘った1枚と感じます。
▷ 米津玄師 『LOST CORNER』
2025年時点での米津玄師の最高傑作と評す人も多い6thアルバム。
タイトルの『LOST CORNER』はノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』から引用されている。
『失われたものへの眼差し』をテーマに、J-POPやオルタナティヴ・ロックの要素を絡めつつ、米津玄師らしい世界観が展開した1枚。
▷ 藤井風 『LOVE ALL SERVE ALL』
藤井風の2ndスタジオアルバム。タイトル『LOVE ALL SERVE ALL』は藤井風の父がよく口にしていた、インドの聖者サティヤ・サイ・ババ由来の言葉です。
インドでは『SERVE』は、弱者や困窮者、生き物への奉仕の意味を持ち、『すべての存在を愛し、奉仕する』という、彼の音楽に込められたメッセージ性を象徴しています。
▷ Vaundy 『replica』
タイトルの『replica』には『オリジナルと複製の関係性』や『今現在でのアイデンティティ探求』の意が込められます。
Vaundyは『オリジナルは模造品の積み重ね』と語ります。音楽は過去の影響を受けつつ進化すると考え、既存の音楽スタイルを再構築することでレプリカの最新型=独自のサウンドを追求しようとした作品と云えます。
▷ 宇多田ヒカル 『SCIENCE FICTION』
宇多田のベストとして人気が高い本作だが、全26曲のうち、3曲は新たにレコーディングし、10曲は新MIXで収録されている。
宇多田初期のR&B傾向から、エレクトロやジャズ、ダンスミュージック寄りのアレンジなど、オリジナルの雰囲気を残しつつ、現状からの革新をめざす宇多田ヒカルの音楽的探究/挑戦が感じられるアルバム。

これも大賞の行方は見当もつかない。
米津玄師の『LOST CORNER』が、個人的には聴いていて好きだが、コアな音楽ファンを中心に藤井風の『LOVE ALL SERVE ALL』、Vaundyの『replica』の評価は高い。
単純に売上や知名度を考えれば、Mrs. GREEN APPLEの『ANTENNA』や、宇多田ヒカルの『SCIENCE FICTION』は強いだろう。
ただ、こういう言い方をしては身も蓋もないが、『MUSIC AWARDS JAPAN』には『日本レコード大賞』などと異なり歴史がない。大賞をどのアルバムが取るか、ということより、価値あるアルバムとしてノミネートされたことに意義がある気もする。
趣向や感性、価値観がやたらに多様化した現代社会では、一番を一つにすることにこだわる必要はない。
「へぇー、こんな音楽があるんだ!」とさまざまな音色に触れ、感じるきっかけになれば、さらに日本の音楽の多様性を世界に発信できれば、『MUSIC AWARDS JAPAN』の存在価値は合格ではないだろうか?