もう1曲、今の私だからおススメしたい曲をご紹介。
『関白宣言』『案山子』『北の国から』『防人の詩』『精霊流し』『あまやどり』『風に立つライオン』・・・。グレープ時代を含めれば、さだまさしの代表曲は数限りない。
そんな中でこの『療養所 -サナトリウム-』は知る人ぞ知る1曲だろう。

『サナトリウム』は明治中期にドイツ人医師ベルツが、結核の長期療養施設として日本に導入したと云われます。
一時は末期患者の看取り場のように言われた時期もあったようですが、現在では長期療養施設の意味合いが強く、『療養所』や『病院』の名に変更荒れているところが多いと聞きます。
さださんの歌は、事実を元にした物語を、曲に乗せて歌う吟遊詩人的曲が多いのですが、『療養所 -サナトリウム-』の主人公は、もうすぐこの施設を退院する「ボク」です。
もうすぐ療養所を去るボクの心を重くする、一人のお婆さん。
彼女はさっき飲んだ薬の数さえ覚えていない。
でもなぜか、毎晩、同室のボクの毛布をかけなおしてくれた。
このことだけは忘れなかった。
よく人は年を取ると子供に還るというがあれは嘘だ。
思い通りにならない手足、記憶も不安定になり、心にもいつしか雲がかかってくる。
夢も希望もいっぱいあっただろう。
そんなものを一杯抱えて「ボク」らは年老いていく。
お婆さんの見舞いに来る人は少なくともこの2カ月は一人もいない。
老いること、孤独であること、この世を去ること、全て逃れられない現実だけど、ボクにも一つだけできることがある。
来週からボクは彼女の見舞客になれる。
たった一人だけど、彼女の見舞客になれる。
そんな歌だろうか?
入院していると患者はほとんど老人だ。
寂しさを紛らわすためにやたらに看護師に注文を付ける人、少しボケてしまってご飯をまだ食べてないと騒いでいる人、仕事があると一日中電話をしている人、いつ帰れるかとしきりに医者に詰め寄る人・・・。
入院前は気づかなったがみんな必死なんだと気づいた。
今、できる範囲で幸せになろうとしている。
そして思い通りにならない現実を受け入れ、淡々と命を費やしている。
「本当の平等」とは他人の幸せを認めてあげて、できれば寄り添ってあげることかもしれない。
不安を抱いている私には、そんなふうに思えてくる。
それは私の弱さやヘタレが生み出す思いかもしれないけど、。
元気なとき、病気になったとき、大切な人と別れたとき、機会があれば一度は聴いてみてください。
今まで見つけられなかった価値観や感情に出会えるかもしれません。