変わり続けた軌跡 -マイルス・デイビスを聴く-《前半》

変わり続けた軌跡 -マイルス・デイビスを聴く- 音楽を語ってみた
マイルス・デイビスを聴く

 ジャズをあまり聴かない人でも、マイルス・デイビスの名は知っておられるのではないでしょうか。
スタジオアルバム 60枚ライヴアルバムは39枚、再発盤や編集盤、別テイク集、共演作やコンピを含めると数はさらに大幅に増えます。加えて死後も未発表音源がリリースされる・・・『ジャズの帝王』にふさわしい活躍をしたアーティストです。

 ただ、マイルスが『ジャズの帝王』と称される所以は、量的な活躍に起因するものではありません。彼の偉大さ=魅力は、マイルス自身がそのアーティスト人生において、絶えず今の自分の音楽に満足せず、新しい音楽スタイルを模索し続けたことにあるのではないでしょうか?

 1940年代後半、ジャズ界ではビバップという複雑で高速なモダンジャズが主流でした。若きマイルスは、チャーリー・パーカーの元で、超絶テクニックを駆使した演奏スタイルを学んだと云われます。
 マイルス・デイビスの名を最初に世に知らしめたのは『クールの誕生(Birth of the Cool)』によるクールジャズの発表でした。複雑すぎる音を整理し、音楽の熱量を下げ、『間』を活かし、室内的な響きを追求することで、『静けさの美学』をジャズに持ち込みました。
 マイルスの凄みは、このクールジャズとほぼ同時期に、対称的な音楽=後にハードバップと呼ばれるスタイルを発表したことです。ブルースやゴスペルのエッセンスを積極的に取り入れ、ジャズの原点である黒人音楽への回帰を目論見ました。力強いグルーヴと歌心あるメロディーが甦りました。
 当時、マイルスはプレスティッジからコロムビアへの移籍を予定しており、記録上はたった2日で25曲の録音を完了したと云われています。このとき、マイルスコルトレーンチェンバースガーランドフィリー・ジョー、の第一期クインテットが録音したのが、マラソンセッション4部作と呼ばれる名盤クッキン(Cookin’)』『リラクシン(Relaxin’)ワーキン(Workin’)スティーミン(Steamin’)の4作品です。
 1960年代に入ると、マイルスは伝説の名盤『カインド・オブ・ブルー(Kind of Blue)』を発表します。モード・ジャズの金字塔と呼ばれる作品です。ジャズをコード進行の束縛から解放し、音階の色彩と空間を自由に探求できるようにしたと云われます。その音楽は静かで、深く、都会の夜の帳に潜む熱い熱情を印象的に描くかのようです。

マイルス・デイビスの『変わり続けた軌跡(前半)』を綴った名盤を紹介します。ぜひお聴きください。


クールの誕生
【オススメ】ギル・エヴァンスらと緻密な編曲を追求し、ビバップの熱気とは異なる、知的で抑制されたクール・ジャズの幕開けを告げる。1949~50年の録音。《1957》

ウォーキン
【オススメ】1950年代ジャズの本流、ハード・バップの象徴的作品。ブルースを核に、マイルス、ホレス・シルヴァーらが力強く即興を展開。『クールの誕生』とは対照的な1枚。

クッキン
【オススメ】マラソン・セッション4部作の一つ。ジョン・コルトレーンを含む黄金期クインテットが、スタンダードを素材に自由闊達な演奏を展開。マイルス流ハード・バップの完成型。《1957》

バグス・グルーヴ
【オススメ】1954年録音の名セッション。ミルト・ジャクソン、セロニアス・モンクらとの共演で、ブルースとモダン・ジャズの魅力を凝縮。1950年代ジャズの人間味豊かな演奏を楽しめる。《1957》

リラクシン
【オススメ】マイルス・クインテットの『くつろぎ』を極めた名盤。コルトレーンやレッド・ガーランドらとの演奏は、緊張感と余裕が絶妙に共存。ハード・バップの洗練された美学を象徴。《1958》


死刑台のエレベーター
【オススメ】ルイ・マル監督の映画に即興的に音楽をつけ、暗い夜のパリを思わせる孤独で幻想的な音世界を創造した。映画音楽とジャズの新しい関係を切り開き、モード・ジャズに繋がる1枚。《1958》

マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ
セロニアス・モンク、ミルト・ジャクソンらとの異色共演。『The Man I Love』ではマイルスとモンクの個性が激突。1950年代前半のモダン・ジャズの緊張感を伝える。《1959》

ワーキン
【オススメ】黄金期クインテットの実力を凝縮した名盤。1956年のマラソン・セッションの録音。コルトレーンとの絶妙な掛け合いを堪能できる、ハード・バップの完成形の一つ。《1959》

スティーミン
黄金期クインテット最後期の魅力を伝える。1956年マラソン・セッションの録音。マイルスの抑制されたトランペットとコルトレーンの奔放なサックスが共存し、個性を響き合う1枚。《1961》


パリ・フェスティヴァル・インターナショナル
初期のクール志向が芽生える記録。ヨーロッパでの評価を高めた歴史的公演。《1949》

ラウンド・アバウト・ミッドナイト +4
【オススメ】 コロンビア移籍第1作。ハードバップの成熟とマイルスの抒情美を示す重要作。《1957》

マイルス・アヘッド +5
ギル・エヴァンスとの協働。オーケストラとトランペットの新しい融合を提示。《1957》

マイルストーンズ +3
【オススメ】 モード奏法の萌芽を示す転換点。後の『Kind of Blue』への橋渡しとなる名盤。《1958》

アット・ニューポート1958
モード期直前の勢いを捉えたライブ。バンドの成熟を示す記録。《1958》

カインド・オブ・ブルー +1
【オススメ】 モード・ジャズの金字塔。コード進行から解放された新しい即興美学。ジャズを根底から変えた。《1959》

スケッチ・オブ・スペイン +3
スペイン音楽とジャズの融合。オーケストラ的表現の到達点。《1960》


ザ・ファイナル・ツアー
1960.3.21~24。コルトレーンが参加した最後のツアー音源。モード期前夜の緊張感ある1枚。《1960》

サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム
モードとハードバップの過渡期。柔らかい叙情性が光る人気作。《1961》

コンプリート・カーネギー・ホール
モード期初期の大規模ライブ。バンドの緊張感と構築力が際立つ。《1961》

マイ・ファニー・ヴァレンタイン
【オススメ】 繊細で内省的な名演。マイルスのバラード美学を象徴する1964.2.12のライヴ前半。《1964》

フォア&モア
第二期クインテットの爆発力を示す1964.2.12のライヴ後半。スリリングでアップテンポ。《1964》

マイルス・イン・トーキョー
ェイン・ショーター加入直前の過渡期。バンドの変化の瞬間を捉えた記録。《1964》

マイルス・イン・ベルリン +1
ウェイン・ショーター初参加。第二期クインテット誕生の歴史的瞬間。《1964》


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