森鴎外を朗読CDで楽しむ

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 明治の文豪・森鴎外。

森鴎外作品 朗読CD -高瀬舟, 山椒大夫, 最後の一句, 舞姫, 阿部一族, 心中-

森鴎外作品 朗読CD

 津和野藩(島根)藩主の侍医の家系に生まれ、幼少よりエリート教育を受けた森林太郎は、12歳で東京医学校(東京大学医学部の前身)予科に入学。大学卒業後はドイツに留学し、軍医としての道を歩みます。一方で帰国後には執筆活動を開始。翻訳家、評論家としても活躍しました。
 陸軍軍医総監、帝室博物館長などを歴任した森林太郎でしたが、森鴎外として遺した作品からは、彼の複雑な心境を伺うことができます。武士として生を受け、一方で最新のドイツ医学を学び、文学博士を取得するほど文芸にも長じた・・・この多才さ羨ましい限りですが、森林太郎個人の中に、複数の視点、異なる価値観、対立する判断軸、の共存することを意味しました。その自己矛盾の葛藤が森鴎外の小説には描かれています。

「余ハ石見人、森林太郎トシテ死セント欲ス」

この森鴎外の遺言は、「それもこれも全部まぜこぜで森林太郎なんだ!」 そんな叫びにも聞こえてきます。
この後「馬鹿馬鹿しい!」と一言遺して亡くなったそうですが、最後までこの複数の価値観に拘って死んでいく自分自身への捨て台詞? たむけだったのかもしれません。

column.1 森鴎外の小説に長編はないの?
 舞姫高瀬舟最後の一句・・・。山椒大夫阿部一族にしてもやや長めという程度で、長編という言葉は似つかわしくありません。
 長編といえるのは、初期作の『青年』、晩年の傑作『渋江抽斎』、『雁』なども比較的長い部類です。
 ただ、三島由紀夫は、鴎外の文体は非常に簡潔で、無駄がなくスマートなので長編になりにくいと語っておられますし、長編になりにくい構成であることもよく指摘されます。鴎外作品には『ある事件や出来事がなぜ発生したのか、その後どうなったのか』を登場人物や語り手から聴き取り、紹介する形式がよく見られます。聞き取る段階である程度まとめられますから、原稿量は短くなりがちです。
 さらに、鴎外が非常に多忙な人物だったことも大きな制約だったと思います。鴎外の本業は陸軍軍医総監というエリート官僚です。限られた時間に集中して原稿を書くため、短編が多くなったのではないでしょうか?
column.2 森鴎外は結局どうしたかったんだろう?
 殆どの森鴎外作品には、『個人の意志や自然な感情』と、それを制限する『社会制度や法律、道徳、世間体』との『価値観の問い』が投げかけられている気がします。『高瀬舟』では『法と慈悲』『阿部一族』では『主命と誇り』『心中』では『社会常識と純粋な感情』、というように、どちらが正しいと簡単には決断できない、どちらを選んでもベストな結果には辿り着けない『最悪の選択』を物語を通して、鴎外は私たちに突きつけます。
 これは森林太郎が、誇りを大切にする武家育ちであり、合理性とリアリズムを直視する科学者(医者)であり、ロマンチズムの極致たる作家であったことに由来する気がします。彼自身がいつも異なる価値観の中で己がどうあるべきか試行錯誤されていたのかもしれません。鴎外はこう言い残しました。

余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス。
陸軍々医総監、医学博士、文学博士等のあらゆる外形的取扱ひを辞す


 自立心の強かった鴎外は、自分を制約するさまざまな肩書に抗いつつも受け入れた人だったのかもしれません。
森鴎外の小説と接するとき、素晴らしい才能と名声に恵まれつつも、一人の森林太郎として死にたかった漢がいたことを思い出してもらえれば、と思う次第です。

 森鴎外・作品別早見表 

阿部一族
大恩ある藩主の死に際し、殉死を禁じられた阿部弥一右衛門。家中の『命を惜しむ卑怯者』との陰口に耐え兼ねにも遂に追い腹をしますが、これが藩命に背いたと見做され阿部一族は苦境に陥ります。長男・権兵衛を中心に何とか危機を乗り越えようとする阿部一族ですが、新藩主との軋轢は一層激しくなり、遂には反逆者として討伐されます。封建武士の皮肉な運命を描いた歴史小説。

《朗読》 若山弦藏 



医科大生の岡田は散歩途中に、一人の女性を見かけます。湯帰りの女の名前は、お玉。年老いた父の為、妾となり、金貸しの囲物になっていたお玉は、岡田に慕情を寄せ、不幸なこの境遇から助け出してくれるのは彼しかいないと思い描くのですが・・・。

《朗読》 芥川隆行 


寒山拾得
敬愛する僧侶の薦めに従い、聖人と呼ばれる“寒山”と“拾得”に会いに出かける役人。しかし、実際に出会った寒山と拾得は二人とも役立たずの薄汚いお坊さんに過ぎないように思われます。あの僧侶にからかわれたのか? 道を究めた聖人に憧れて探しまわる凡人の滑稽さを描いた、森鴎外晩年の名作。

《朗読》 井川比佐志 


最後の一句
16歳の娘いちはは、弟や妹を連れて、死罪を申しつけられた父親のために、奉行所へ赴く。「父を殺す代わりに私たちを殺してください」。いちはの言葉に奉行は・・・。

《朗読》 中村恵子 


山椒大夫
『山椒大夫』は伝承される逸話『さんせう大夫』を森鴎外が、当風にアレンジした小説です。『安寿と厨子王』の名でも知られます。
父の赴任先に向かう旅の途中、人買いに騙され奴隷として売り飛ばされた母と姉弟。奴隷として日々こき使われる中、姉の安寿は弟の厨子王を逃亡させ、自らは入水して果てる。京の都に上った厨子王は、知遇を経て出世し、国司として因縁の地へと帰ってくるのですが・・・。

《朗読》 武藤たか子   《朗読》 相原麻利衣   《朗読》 石原玲 


じいさんばあさん
隠居所に引っ越してきた老夫婦。夫が宴会場で男を死なせてしまい、何十年も島流しになり、最近ようやく再会できたといいます。三十七年も離ればなれになってしまった夫婦の再会を描いた短編小説。

《朗読》 若山弦藏 


高瀬舟
徳川時代、京都の罪人は高瀬川を舟で大阪に下り、島流しに処せられていました。或る夜、護送役の同心・羽田庄兵衛は、罪人である喜助の晴れやかな顔に驚きます。弟を殺し、島流しに処せられる喜助。彼の身になにが起こったのでしょうか・・・。
安楽死の問題を時代を超えて鋭く現代に問いかける名作です。

《朗読》 井川比佐志   《朗読》 渡部龍朗 


鼠坂
日露戦争で成金となり、鼠坂の近所に邸宅を建てた男がいました。新築祝いに招かれた記者・小川は、男から大陸での武勇談を深夜まで聞き続けた挙句、この新宅で脳溢血により死ぬのですが・・・。

《朗読》 今井朋彦 



信州の名家・穂積家を訪れた主人公。穂積家では、主人の妻と母が共に精神を病んでいました。原因を突き止めようとする主人公は、仏壇に蛇がとぐろを巻いているのを発見するのですが・・・。

《朗読》 今井朋彦 


舞姫
森鴎外が自身のドイツ留学体験を元に執筆。エリート留学生・太田豊太郎は、些細なことから、薄幸の踊り子エリスと愛し合うようになります。しかし、結局は出世のためにエリスと別れ、日本へ帰国することを選ぶのですが、豊太郎の帰国を知ったエリスは発狂してしまい・・・。近代的自我に目覚めた明治の知識人の苦悩を描きます。

《朗読》 高橋昌也   《朗読》 加藤剛 


 森鴎外文学 映画その他 DVD 

映画 『阿部一族』
徳川時代初期、まだ戦国の気風が残る細川藩で起こった実際の事件を小説化した『
阿部一族 』を時代劇映画化した。遺命に背き殉死した当主。残された一族は主君の命に背いた一族として迫害を受ける。辱められ、追い詰められた阿部一族は遂に叛旗を翻すのだが・・・。出演は、山崎努・佐藤浩市・真田広之・蟹江敬三など。

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小説名作ガイド『舞姫』『高瀬舟』
近代文学を、それぞれ10~20分で紹介する名作ガイドDVD。映画やアニメによるあらすじの紹介、さらにその作品の背景、著者についてのわかりやすい解説を収録。本作には森鴎外の『舞姫』『高瀬舟』のほか、夏目漱石の『坊ちゃん』を収録。
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アニメ 『安寿と厨子王』
森鴎外の『山椒大夫』を下敷きに、安寿や厨子王と動物たちとの交流なども織り込み、子供が楽しめるよう工夫された劇場用アニメのDVD版。1961年制作のアニメなので、絵柄はやや古臭いが、文部省選定映画だけに構成はしっかりしている。安寿を佐久間良子、厨子王を北大路欣也、母・八汐を山田五十鈴、山椒大夫は東野英治朗など、錚々たるメンバーが声優を務めている。
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映画 『山椒大夫』
「安寿恋しや、ほうやれほ。厨子王恋しや、ほうやれほ・・・♪」
『山椒大夫』の映画化は数あれど、本作に勝る映画なしと云われる伝説の作品。監督は溝口健二。叙情的に、哀切に語られる物語に野暮な理屈は不必要。ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した名画をそのまま味わっていただきたい。(モノクロ/全124分)

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