弊店ではさまざまな伝統技術のドキュメンタリー映像を扱っています。
今回、新しくLINE UPするのは下記商品です。
【染織】型染・長板中形 -松原伸生のわざ-(DVD)
写真を見てもらえばわかるかもしれませんが、そうです、上等の浴衣の生地です。
藍染の一種ですが、生地に型紙をあて、防染糊を使って紋様や絵柄を染め出します。長い木の板に大きな布を貼り付け、江戸小紋などより大きい中ぐらいの形の柄を描くことから、長板中形と呼ばれるようになったそうです。
型染というと機械的な大量生産を思い浮かべる方もおられるでしょうが、型を当て、防染糊を置き、染料を刷り込む作業はすべて職人の手作業です。藍は浸り染めで行い、天日干しをするので、自然の影響も多々あります。そこに個体差=個性が生まれ、職人の違いが現れます。機械では出せない『揺らぎの美』『不完全な美』がそこにはあります。
衣服や布ものに関する染織技術は日本の文化形成や生活の在り方に大きく影響していると云われています。とりわけ日本の染色は、藍染だけでなく、紅染、紫染、染める手法もさまざまです。制服の色はチームの帰属意識や連帯感を育み、青色は落ち着きを、赤色には活力や情熱を感じる人が多いように、衣服やインテリアの色選びは無意識のうちに気分や行動に作用します。色を選ぶことは私たちの精神のコントロールにも強く影響しています。

型染・長板中形、染め
長板中形の技術は主に『浴衣』の染色に用いられてきました。単に『美しいから』だけではないと思います。『粋』や『控えめな美しさ』という日本人の美意識が底流にある気がします。
長板中形で染め上げた生地は藍一色が基調となるため、遠目には涼やかで端正に見えます。しかし近づくと、細やかな幾何学模様や草花文様が驚くほど精密に表現されています。派手な色彩で人目を引くのではありません。けれど、見れば見るほど味わいが深まる。好きになる。
幼い頃に、亡くなった叔母に、『飴ではなく、スルメのような人間になれ』とよく言われました。噛めば噛むほど味が出る・・・未だ至りませんが、長板中形の染め物もそんな境地かもしれません。
江戸時代から明治にかけ、浴衣は庶民の普段着でした。豪華な絹の着物ではなく、藍染の木綿の浴衣の方が、暑い夏を快適に過ごせた、実用品だったのです。『美しさ』と『実用性』の両立、それは柳宗悦が提唱した『民藝』=『用の美』に通じるものだと思います。
また藍一色といっても、濃淡やにじみ、白と藍のコントラストが生み出す豊かな表情。この多くの日本人が感じる『美の感覚』は現代の陶芸や建築、デザインやアニメーションにも受け継がれています。『引き算の美学』というやつです。
そう考えると、染色という色を生み出す技術が何百年もかけて日本に育んだものは、けっこう大きくて、大切なものである気がします。

ドキュメンタリー映像では人間国宝・松原伸生さんお仕事風景を丹念に記録しています。長く継承される伝統技術の中に、日本人らしさ、日本人の矜持を感じて戴ければ幸いです。



