6月は山梔子(くちなし)が咲く・・・『くちなし悲歌』香西かおり・・・

くちなしの花に想う 音楽を語ってみた
くちなしの花に想う

 6月の花というと、紫陽花や花菖蒲を思い浮かべます。ただ私は実は山梔子(くちなし)がけっこう好きです。
書かに雪に真っ白な花を咲かせ、甘い香りを発します。
「あぁ、山梔子の季節だぁ」なんて思っていると、数日で黄色く変色してしまいます。
幸せな時間(とき)はあっというまに色褪せ、終わりを迎えてしまう、その風情から『さよならの花』なんて言われ方もするようです。

香西かおり ベスト全曲集28 -雨酒場,無言坂,流恋草,宇治川哀歌,くちなし悲歌-(CD2枚組)

香西かおり ベスト全曲集28

 この山梔子を唄った歌では渡哲也さんの『くちなしの花』が有名ですが、あまり売れませんでしたが心に残る曲が2014年にシングルリリースされています。

香西かおり 『くちなし悲歌』

 この歌は作詞が小谷夏(演出家 久世光彦)作曲が三木たかし。香西さんが以前からライヴで大切に歌い続けていた曲が改めてシングル発売されました。

初夏、山梔子が咲く頃に出会った一人の男。
彼女は子供の頃聞いた御伽噺が再び自分の元に帰ってきたと二人の時間を楽しむ。
それはまるで山梔子の甘い香りに似た深くて溶け合うような時間・・・。
でもその大切な時間は長くは続かず・・・。

 久世さんに限らず、なかにし礼さん、つかこうへいさん、伊集院静さんなど小説家、舞台系の方が作詞された楽曲はどれもドラマチックで情が深く、一人の人間の人生が投影された、物語を聴くような臨場感あふれる楽曲が多いように思います。

 この『くちなし悲歌』・・・別れた理由は歌の中では語られません。でも当然なにか二人が笑って別れを選んだ理由があります。それはリスナーに預けられています。隙間というのでしょうか。
 人間或る程度長くやっていますと、別れたくて別れたんじゃない『別れ』もあります。環境かもしれないし、性格かもしれないし、ちょっとした行き違いかもしれない。リスナーはそれぞれの人生を投影して、歌の中の二人の別れの辛さをともに受け止めます。
 それはカラオケで歌うにはちょっと重いのかもしれませんが、聴けば胸にジンと来るのかもしれません。


安西篤子 短編時代小説集 -金雀児,紅梅,山梔子,菖蒲,蘇芳,南天,万両,著莪-(CD全8枚/分売可能)

【朗読】安西篤子『山梔子』

 山梔子といえば、安西篤子さんの短編時代小説『山梔子』があります。
この小説も別れの話でした。

 絵が大好きだった少し内気な女性が、育ての親の思惑に背いて選んだ人は、絵の師匠の一番弟子でした。妻の養父養母への感謝をちゃんと伝えるためにも苦手な城勤めに精を出す婿殿だったが、ある日些細なことで同僚の侍たちとの間に刃傷沙汰を起こってしまいます。お家に迷惑をかけぬよう、いざというときは自分から縁を切る、と心を定め、傷ついた同僚の回復を望む若夫婦と彼らを温かく見守る養父母。やがて、定めの日が目前となり・・・。

山梔子の花に込められた、言葉にならない願いと哀愁を、香西かおりが歌った隠れた名曲。
『くちなし悲歌』をお聴きください。


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