6月の花というと、紫陽花や花菖蒲を思い浮かべます。ただ私は実は山梔子(くちなし)がけっこう好きです。
書かに雪に真っ白な花を咲かせ、甘い香りを発します。
「あぁ、山梔子の季節だぁ」なんて思っていると、数日で黄色く変色してしまいます。
幸せな時間(とき)はあっというまに色褪せ、終わりを迎えてしまう、その風情から『さよならの花』なんて言われ方もするようです。
この山梔子を唄った歌では渡哲也さんの『くちなしの花』が有名ですが、あまり売れませんでしたが心に残る曲が2014年にシングルリリースされています。
この歌は作詞が小谷夏(演出家 久世光彦)、作曲が三木たかし。香西さんが以前からライヴで大切に歌い続けていた曲が改めてシングル発売されました。
彼女は子供の頃聞いた御伽噺が再び自分の元に帰ってきたと二人の時間を楽しむ。
それはまるで山梔子の甘い香りに似た深くて溶け合うような時間・・・。
でもその大切な時間は長くは続かず・・・。
久世さんに限らず、なかにし礼さん、つかこうへいさん、伊集院静さんなど小説家、舞台系の方が作詞された楽曲はどれもドラマチックで情が深く、一人の人間の人生が投影された、物語を聴くような臨場感あふれる楽曲が多いように思います。
この『くちなし悲歌』・・・別れた理由は歌の中では語られません。でも当然なにか二人が笑って別れを選んだ理由があります。それはリスナーに預けられています。隙間というのでしょうか。
人間或る程度長くやっていますと、別れたくて別れたんじゃない『別れ』もあります。環境かもしれないし、性格かもしれないし、ちょっとした行き違いかもしれない。リスナーはそれぞれの人生を投影して、歌の中の二人の別れの辛さをともに受け止めます。
それはカラオケで歌うにはちょっと重いのかもしれませんが、聴けば胸にジンと来るのかもしれません。
山梔子といえば、安西篤子さんの短編時代小説『山梔子』があります。
この小説も別れの話でした。

山梔子の花に込められた、言葉にならない願いと哀愁を、香西かおりが歌った隠れた名曲。
『くちなし悲歌』をお聴きください。




