能の人気演目『葵上』が、東近江市で上演されるとのこと。能装束の着付実演や能面の展示もあるということで、少し紹介させていただきます。
東近江市とは、滋賀県・琵琶湖の東、近江八幡市のさらに東にあります。八日市市に近隣6町が合併し、今の市域となっています。京都からより、もしかすると岐阜や愛知の方の方が近く感じるかもしれません。
イベントの概要は下記の通り。
【 日時 】2026年6月23日(火) 13:15開演(12:00開場)
【 場所 】能登川コミュニティセンター
東近江市躰光寺町262番地(JR能登川駅西口より徒歩5分)
【入場料】前売一般 2,500円(22歳以下は1,000円)/ 全席自由席
※当日券は+200円。ただし前売り完売の際は販売なし
【連絡先】能登川コミュティセンターさま ☎050-5802-2793
滋賀能楽文化を育てる会 ☎0748-42-0002/090-8885-2674
【 内容 】

6.23 能『葵上』02
現在の滋賀県、旧近江の国と、能楽の間にはけっこう深い繋がりがあると云われます。
能楽のルーツの一つに、室町時代の『近江猿楽』があると云われています。近江猿楽には複数の『座(芸能集団)』が存在しましたが、日吉座の『犬王』は将軍・足利義満からお墨付きを得るほどの天才役者だったそうです。能を大成させた世阿弥は、この犬王の優雅で華麗な舞に、『幽玄の美』を感じ取り、自らの芸に取り入れたと云われています。
また滋賀県を舞台にした演目が多いこともよく知られます。西国三十三所札所として知られる琵琶湖中央に浮かぶ『竹生島』や、大津の『三井寺』(園城寺)、『石山寺』、他にも『志賀』『白鬚』『望月』など、琵琶湖周辺の自然や社寺が数多く取り上げられています。ちなみに『石山寺』は紫式部の源氏物語起草の地としても知られます。
さらにこの近江の能楽文化を今に伝える礎となったのが彦根藩藩主・井伊家の庇護でした。彦根城博物館には、江戸時代の表御殿能舞台が今も大切に残されており、当時の能面や能装束が展示されています。桜門外の変で暗殺された井伊直弼大老も能楽に深く傾倒されていたそうで、能『筑摩江』、狂言『鬼ヶ宿』などを自ら作曲したと伝えられています。
『葵上』は『源氏物語・第九帖 -葵- 』を能にした演目です。物語のきっかけは、少し前にもこのブログで紹介した葵祭(賀茂祭)での車争いに遡ります。
このとき賀茂祭の『御禊の儀』を見物しようと六条御息所は密かに牛車でお越しになっていました。彼女の年若き愛人・光源氏がこのイベントの警護を担当していたからです。ところが、ここに現れたのが光源氏の正室・葵上の牛車です。当世一のスター光源氏を一目見ようと集まる民衆を押しのけ押しのけ現れた葵上の牛車は、遂に六条御息所の牛車も追い出してしまいます。六条御息所の牛車は破損し、民衆の影へと追いやられてしまいます。
もともと六条御息所は、光源氏の年の離れた異母兄・前皇太子の未亡人でした。教養も格式も人に勝る人物でしたが、年々老いる自分から光源氏の心が離れ行くを心配しているときでもありました。そこに左大臣の娘で想い人の正室が大威張りで押しのけてきたわけですから、腹が立つやろ、恥ずかしいやら。ついに生霊となり、葵上を苦しめるようになるのです。高貴な人の怒りとは下々の私どもとは次元が異なるところがございます。
能の『葵上』はこの状況から物語が始まります。生霊の呪いで苦しむ葵上をなんとか救おうとする巫女や修験者の姿が描かれるわけです。

能の演目は舞台上で演じられるシーンより、その前段、描かれないシーンを理解していないと楽しめないことが多いようです。なぜ六条御息所が生霊に変化するほど、葵上を憎んだのか、それがわかると、シテである生霊の謡や舞が感じ取りやすいかもしれません。
十分まだまだ美しく、学識も本来なら慎みもある女性が、不安と嫉妬のため我を忘れ、鬼女に変貌する・・・不細工な私には縁のないことでございますが、世の美男美女の皆さまにはお気をつけられるよう、衷心よりご進言申し上げる次第です(^^;
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