先代 市川團十郎の『宮本武蔵』がDVD化。二人の人生がシンクロする人間ドラマ!

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 現在の市川團十郎白猿の父十代目 市川海老蔵後の十二代目 市川團十郎)が主演した『宮本武蔵 1975年版』はじめてDVD化されました。

宮本武蔵 1975年版 十代目・市川海老蔵(十二代目・市川團十郎)

宮本武蔵 1975年版

 白猿も海老蔵時代に大河ドラマで『宮本武蔵』を主演されているのでよく混同されますが、この親子、実はその生い立ちもあり、ずいぶん芸風が違うことでも知られます。お二方の個性の違いが同じ吉川英治『宮本武蔵』を原作にしつつも、異なる趣の作品に仕上げています。
 少し、その違いを語ってみたいと思います。

 吉川英治の『宮本武蔵』は、関ヶ原合戦での武蔵の初陣から、佐々木小次郎との巌流島の決闘までを描きます。手のつけられない暴れ者だった武蔵(たけぞう)が、一派を開くほどの武人・武蔵(むさし)に成長する道のりを描いた作品です。吉川英治さんは、『太閤記』『水滸伝』三国志』『親鸞』『日蓮』などのように、古典の名作や偉人伝を脚色、アレンジし、人間の可能性を訴え続けた作家として知られます。

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 この1975年版『宮本武蔵』は数ある同作の実写化作品の中でも、とりわけ原作のこのテーマをよく体現していると云われます。例えば白猿の『宮本武蔵』がスター性にあふれ、アクションシーンが多く、非常に娯楽的要素が強いのに対し、1975年版は重厚でどっしりとし、淡々とした風情があります。
 主演の十代目 市川海老蔵さんは若くして父親を亡くされたそうです。血筋から言って、彼が次代の團十郎を継ぐのは宿命であり義務だったのでしょうが、映画『国宝』でも綴られたように伝統芸能の世界は芸だけでなく、血筋や格式、なにより引き上げてくれる後楯の存在が大切です。
 そのうえ十代目・海老蔵の母・千代さんは、宮尾登美子『きのね』で書かれていますが、もともと十一代目 市川團十郎の実家・松本幸四郎さんの女中さんでした。海老蔵は十一代目が妻と離婚し、千代さんと事実婚(後に正式に結婚)状態にあったころに誕生されました。そんな出生の過程もあり、若い頃は『下手くそ』『華がない』と非難され続けたそうです。

宮本武蔵 お通の篠笛

お通の篠笛

 そういう苦難にじっと耐え、地道に精進を重ね、見事に大名跡『市川團十郎』の名を守られた努力は、私たちのうかがい知る範囲を超えていると思われます。その評価は人それぞれでしょうが、『歌舞伎の求道者』たる生き様は、『剣の求道者』たる宮本武蔵に相通ずるものがあります。
 粗野で乱暴で短絡的な若いころの武蔵が、宝蔵院胤舜(北上弥太朗)や宍戸梅軒(小池朝雄)らとの死闘、吉岡一門との果てしなき対立、佐々木小次郎(浜畑賢吉)との遭遇を経て、またお通(小林由枝)への恋慕や、身を持ち崩していく友・本位田又八(目黒祐樹)や朱美(沢かおり)とお甲(吉行和子)の母子との葛藤を乗り越え、一角の武人へと変化していく。その道のりは、まさに当時の海老蔵さんがこれまで、そしてこれから歩まれていく人生と酷似していたのかもしれません。
 26話すべてを通してみれば、確かに華やかさには欠け、アクションシーンも派手ではありませんが、確かな人間ドラマが綴られており、武蔵の成長が丁寧に綴られた作品になっています。

 一方、白猿さんはやはり生まれながらのスターです。彼が演じる『武蔵』は名家の子弟らしく、外連味に溢れ、派手やか。アクションシーンも平成大河らしく激しく大がかりです。吉川英治が綴ろうとした『剣の求道者』というより『天性の才が華ひらいた』感があります。

 どちらが好きかは好みですが、同じ原作を元に作品を作っても、俳優の気風や、世相の流れ、撮影の方針などで全く異なる作品になるという、一つの例のように思います。
 吉川英治『宮本武蔵』はほかにも、中村錦之助、三船敏郎、高橋英樹、役所広司など各氏が主演をされています。見比べてみるのも面白いかもしれませんね。


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