勝新太郎が河内山宗俊を演じた個性派時代劇。DVDで復活!

勝新太郎の時代劇『痛快!河内山宗俊』 NOW MUSIC!-聴いてみて-
勝新太郎『痛快!河内山宗俊』

 1970年代、時代が映画からテレビに移ろうとしていた時代。三船敏郎中村錦之助(萬屋錦之介)勝新太郎石原裕次郎、などはこぞって独立プロダクションを設立。自分の思い描く映画&時代劇を製作しようとテレビドラマへ進出しました。

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 特に勝新太郎は、主戦場としていた大映の経営が傾き、またその個性の強さも相まって独立プロは必然の様相でした。
 1967年に設立し、1981年には当時で12億円という巨額の負債を抱え倒産した勝プロですが、作品としては非常に大きな足跡を残したといわれています。映画では、『人斬り』『御用牙(勝新太郎主演)シリーズ』『子連れ狼(若山富三郎主演)シリーズ』。テレビ時代劇では『座頭市物語』や今回紹介する『痛快!河内山宗俊』です。

 この『痛快!河内山宗俊』は、講談の『天保六花撰を勝新流にアレンジし、勝新が演じたい人間像を演じた作品と言われています。勝新太郎さんはその風体や荒々しい印象とは異なり、
『斬らずに勝つ』
を美意識に持っておられたそうです。
実際に代表作『悪名シリーズ』や『兵隊やくざ』でも喧嘩シーンは多いですが、殺害シーンはあまりありません。

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 本作の主人公、河内山宗俊は江戸時代の実在の人物で、江戸城に勤めるお数寄屋坊主でした。坊主とついていますが僧侶ではありません。茶の湯の専門職であり、将軍の近くに仕え、将軍や大名への茶の給仕や茶器・茶道具の管理をしていました。将軍のお側近くに仕えることから大名からも一目置かれる存在だったようです。
 河内山はその権力を利用し、大名屋敷に乗り込んでは弱みを握り、ゆすり・たかりを働いたと云われます。
 江戸時代末期から明治にかけて活躍した講談師・松林伯圓(二代目)は、実録『河内山実伝』を元に、和歌の六歌仙になぞらえ、河内山宗俊など六人の悪党を『天保六花撰』と名付けました。
 彼は世の殆どの人々が『善』と『悪』、異なる意志の狭間で生きていることを知っていました。ですので単なる勧善懲悪ではなく、『悪の中の情』を描いた作品にしたのです。

悪党にも義理がある
恋にも滅びの美がある(直侍と三千歳の悲恋)
人は弱さゆえに転落する(丑松の裏切りと転落)
 しかし、彼はそこにこそ人間らしさや、救いの余白があると考えたのです。

 価値観が大きく変遷した幕末~ご維新の作品です。人々はこの伯圓の人間観に大いに賛同したのではないでしょうか。
 その後、『天保六花撰』は、河竹黙阿弥により歌舞伎『天衣紛上野初花』『雪暮夜入谷畦道』になり、初代・木村重友により浪曲でも上演されます。


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 テレビ時代劇『座頭市物語』の成功で勢いに乗る勝新太郎は、この名作『天保六花撰』を下敷きにして、映画レベルのクオリティーを持つテレビ時代劇として『痛快!河内山宗俊』を企画しました。
 監督を三隅研次、工藤栄一、森一生ら名匠に、撮影には宮川一夫、森田富士郎ら当時№1のカメラマンに依頼したのはその野望の現れです。
 また役者も個性派を揃えました。『天保六花撰』では吉原の花魁・三千歳と恋仲になる直侍出門英、三千歳の代わりとなる紅一点・お千代に桃井かおり、どこか危うさが漂う元掏摸・暗闇の丑松火野正平、河内山と対立しつつも共闘する剣客・金子市原田芳雄、豪商にして密貿易も行う森田屋清蔵大滝秀治と錚々たるメンバーが名を連ねます。さらに若山富三郎(遠山金四郎)、草笛光子(船宿の女将・お滝)も登場し、臨場感と活気あふれる作品を生み出しました。

 後の『必殺シリーズ』と同じ匂いがするダーク・ヒーローもので、主役の河内山宗俊は強請りたかりを生業とする犯罪すれすれの男。直侍や丑松、金子市もどうにも似たり寄ったり。ところが、この河内山宗俊。
「悪党にも品がいる。品のねえ悪は、ただの外道よ」と宣います。
「強い者には強く、弱い者には弱く。それが江戸の理屈よ」と言い切ります。

 長いものに巻かれ、弱きものを叩くに叩く・・・懐の重さと、世の名声ばかりを人間の尺度にしてしまいがちなことは、今も1970年代も同じだったようです。
 人間が本当に人間であり続けるために大切にすべきこと、勝新さんなりの答えがこのドラマには隠されているかもしれません。


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