シルヴィ・バルタン ふたたび・・・ダメか!?

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シルヴィ・ヴァルタン(シルビー・バルタン)ベスト全曲集~アイドルを探せ,ロコモーション,など(CD)

シルヴィ・ヴァルタン ベスト全曲集

 皆さんはシルヴィ・バルタン(Sylvie Vartan)という歌手をご存じでしょうか?
 1960年代に『フレンチ・ポップの女王』として世界を席巻した歌手です。17歳でデビューし、ハスキーな歌声と洗練されたファッション、圧倒的なスター性で一躍時代の寵児となりました。『アイドル』という概念は彼女から始まったとさえ言われます。

 映画主題歌『アイドルを探せ(1964年)や名曲『あなたのとりこ(1968年)』『おセンチな17歳(1964年)などのヒット曲は、曲名は知らずとも耳にしたことがあるのではないでしょうか。1960年代後半から1970年代にかけて日本ポップス界に旋風を巻き起こしたシルヴィ・バルタン。
 フランス流の、その洗練された美しさと親しみやすさは、女性アイドル最初の『ロールモデル=お手本』となりました。当時の日本の若者は、シルヴィのヘアスタイルやファッション(パンタロンやミニスカート)を真似し、有名なミニスカ・ブームに繋がりました。彼女の楽曲を日本語カヴァーする歌手も多数出現し、日本のその後の楽曲づくりにも影響を与えたといわれています。
 なにより、彼女の活躍がフレンチ・ポップスを流行らせ、フランス・ギャルやダニエル・ビダル、マジョリー・ノエルなどの来日公演につながったのです。


オールディーズ・ヒットソング集~1960年代のアメリカ~(CD3枚組)

オールディーズ~1960年代のアメリカ~

 けれども現在、シルヴィ・バルタンのCDを店頭で見かけることは少なくなりました。
 人気がないわけではありません。前述の『あなたのとりこ』などは今もCM曲に使われています。むしろ、率直さと愛らしさの中の妖艶さを併せ持つ彼女の楽曲は、近年の音楽には薄れているより人間的な訴求力を持っています。
 この1960年代~1970年代前半の人気海外アーティストのCDが日本で見かけなくなった現象は、なにもシルヴィに限ったことではありません。 『気になる女の子』のメッセンジャーズ、 『オー・シャンゼリゼ』『カトリーヌ』で知られるダニエル・ビダルシェリー・フェブレーボビー・マクファーリンジュリー・ロンドンも人気曲すべてがCDで入手できるわけではありません。ジャンルが異なりますが、グレンミラーパーシー・フェイスなど往年のイージーリスニングも同じ轍を踏んでいます。


 なぜ彼らのCDが発売されなくなったのか。
 これは必ずしもフィジカル(CDやレコードなど物理的媒体)から配信への移行が原因とは言い切れません。これら往年の名曲ファンの多くは、配信やダウンロードを苦手とする年配者と、音楽に特に関心が強い若者に偏っています。彼らは往々にして配信よりフィジカルでの所有感を大切にされるのです。
 もちろん最低生産枚数に対し予測売上枚数が最低ロットに至らない、という現実はあります。
しかしそれより重大な理由は下記のようなことではないかと推測されています。


1.権利処理のコスト

 最大の原因と目されるのが、この権利処理のコストです。シルヴィ・バルタンはじめ当時の歌手の音源を使用するには、権利関係をもつ海外レーベル、海外出版社、遺族や管理団体との折衝が必要になります。日本でのCD発売には、原盤使用料、出版権、その後の契約更新を海外各社と交渉する必要があり、コストだけでなく手間もかかります。『少しは売れる』程度では、間尺に合わないのでしょう。
 さらに古い音源には『権利の迷い子』問題があります。原盤権者が倒産したり、権利の移転や相続問題で、誰に許諾を取ればいいのか分からないというケースがしばしば生じるのです。


2.新譜偏重のビジネス構造

 日本の『新曲重視のビジネスモデル』も大きな壁になっています。現状では、レコード会社は 新譜を売らないと利益が出ませんプロモーターは新曲宣伝で収入が発生します評論家は『時代の更新』を語るのが仕事ですから、どうしても新しいサウンド、新しいアーティスト、新しい潮流を語ります。結果、「新しいものこそ進化している」という語り口になりやすいのです。
 これに拍車をかけるのがテレビを中心とするメディアです。メディアは新しい話題を扱うほうが視聴率を稼げます。古い歌をほめても財布は膨らまないので、「新しい歌のほうが優れている」という空気を作りがちです。また番組構成も、『新曲披露』『新譜キャンペーン』『新曲ランキング』が長く王道でした。


3.担当者の世代交代
懐かしの洋楽ベストヒット70's~1970年代の名曲たち(CD5枚組)

洋楽ベストヒット70’s

 見落とされがちですが、これも大きな課題です。
 1960年代の洋楽をリアルタイムで知る人が業界からどんどん消えています。作品の価値、日本での人気を知らないわけですから、需要の読みができず「売れないだろう」と判断されやすくなるのです。
 友人の店で、新しく担当になった営業マンがCDを聴いたことがないということがあったようです。弊店の担当にも、アニメソングしか知らない、クラシックは認めない、演歌は歌じゃない、と仰る方がおられました・・・これはひどいんじゃないか、と思った経験があります。
 もちろんほんの数人ですが、極端な話、文化的損失に繋がる気さえします。


 確かに録音技術、ミックス技術、音圧など、技術面は進歩しました。けれども技術の進歩は、必ずしも音楽の進歩ではないと思います。メロディの強さ、歌詞の深み、ヴォーカルの個性、歌が生まれた文化的背景との連動、これらが楽曲の真の価値だと思うのです。
 今、ソニーさまのBlu-Spec CD、ユニバーサルさまのSHM-CDのような高音質CDへの移行が始まっています。添付のライナーノーツの充実もどんどん進んでいます。
 海外の方がシティポップを魅力的に感じてくださるように、むかし流行った音楽だから、古臭いのではないと思うのです。GW前に何人かのお客さまから、懐かしい楽曲の問い合わせをいただきました。要望に応えられる商品が見つからないことも多く、悔しい思いをしました。それで、こういう文章を書かせていただきました。
 ぜひ聴いたことがない、あなたのご両親や、おじいちゃん、おばあちゃんの時代の歌にも耳を傾けていただければと思います。きっと大好きな曲が増えると思います。

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