「近年は古代史ブーム」という言葉を時折、テレビの情報番組や本の帯なんかで見受けますが、正直云えば、あれは誇張のような気もします。
けれど一方で、古代史や古事記、日本書紀などを扱う書籍が増えていたり、日本各地、例えば奈良や出雲、九州の高千穂などで神話ネタを軸にした町おこしが起こっていることも事実です。
かくいう弊店でも、古事記や日本古代史を紐解いた講演CDや朗読CD、世界遺産DVDのご購入が増えています。
興味を持つ人が増加した理由はいろいろあるようですが、科学や現地調査の進展により新たな事実が判明し、既定の常識が覆されたり、再検討され始めたことが大きな意味合いをもぅているようです。例えば『吉野ヶ里遺跡』や『纒向遺跡』の発掘継続による邪馬台国論争の変化や仁徳天皇陵こと大山古墳の調査から当時の権力構造が浮かび上がってきたこと、などがあります。
出土品の成分分析により朝鮮半島や中国大陸と交流ルートがわかったり、人骨のDNA鑑定により、日本民族が渡来人の大きな影響を受けて形成されてきたことが証明されようとしています。
このような昨今の流れをうけて、当時の歴史意識=過去を如何に理解し、現在や未来とどう結びつけるか、を神話に置き換えて著述した『古事記』への興味を掻き立てていると思われます。
『古事記』は壬申の乱に勝利した大海人皇子=天武天皇が、当時の神話や伝承を稗田阿礼に暗誦させ、記録した書物です。
兄・天智天皇の息子・大友皇子を打ち滅ぼし、政権を握った天武天皇にとって、自らの王統や権力の正当性を明確にすることが何よりの急務でした。
『古事記』は凡そ3巻構成になっています。天地開闢から推古天皇(聖徳太子が摂政を務めた)までが下記のような順番で記されています。時代が近くなるほど、史実に近い記述が増えるようになります。
上巻 -かみつまき- ≪神代≫
天地開闢
神々の誕生(造化三神・伊邪那岐・伊邪那美)
国生み・神生み
黄泉の国の物語
天照大神と須佐之男命
天岩戸神話
八岐大蛇退治
大国主命の国づくり・国譲り
中巻 -なかつまき- ≪初代天皇~応神天皇≫
神武天皇の東征と即位
初期天皇の系譜
倭建命(ヤマトタケル)の活躍
神功皇后の遠征
応神天皇の治世
下巻 -しもつまき- ≪仁徳天皇~推古天皇≫
仁徳天皇の仁政(民のかまど)
履中・反正・允恭天皇
雄略天皇の逸話
継体天皇以降の系譜
仏教伝来前後の時代
推古天皇までの記録
『古事記』は単なる『古典』や『歴史の記録』ではないように思います。
『古事記』は日本人や日本文化のルーツ、アイデンティティを知るカギになる書物です。
『古事記』は、神話と歴史が連続し、時には混ざり合って展開する、史書としては独特の構造を持っています。この構造が結果的に神話と歴史の一体となった物語の形成に繋がりました。
そこには、天地創造から英雄譚、恋や裏切り、死と再生まで、人間的で普遍的なテーマが凝縮されており、現代の小説や映画にも通じるドラマ性を生み出しました。
ドラマや物語には、当時の古代人の思想や政治観がより表現されるようになります。
同時に、天皇の起源や国家の成り立ちを描くことで、「自分たちはどこから来たのか」「日本人とはどんな民族なのか」という根源的問いに触れられる史書でもありました。

ぜひ古代史の謎、日本人の原景を『古事記』の中に訪ねてみてください。





