北大路魯山人の随筆を聴いて(朗読CD)

北大路魯山人の随筆を聴く(朗読CD) ドラマ/映画
北大路魯山人のエッセー

 嫁さんの薦めで見始めたドラマ『魯山人のかまど』、けっこう嵌ってます。『魯山人のかまど』は、料理人であり陶芸家、書家としても知られる北大路魯山人の晩年を綴ったオリジナルドラマです。
 魯山人が、料理の味を決める根源として『かまど』を重視したことはよく知られています。素材を活かす和食文化の王道を求める魯山人、食材それぞれの持ち味を最大限に引き出すためには、火加減を見極める感性と料理人の美意識が不可欠だと説きました。本作では、『かまど』は単なる調理器具ではなく『料理の魂を育てる場』、即ち『料理人の姿勢』そのものを映し出す存在として描かれます。

【朗読】北大路魯山人 短編エッセイ集 -だしの取り方, 握り寿司の名人, 料理の第一歩, 良寛さまの書-(CD全4枚/分売可能)

【朗読】北大路魯山人 短編エッセイ集

 また、この作品では魯山人の陶芸家としての側面も垣間見ることができます。ドラマの中で語り部的役割を担う若手女性記者・ヨネ子(古川琴音)は、初めての訪問の際、お茶を出されますが、その器に見入ってしまいます。もちろんその器は魯山人の作によるものです。その器の何処が気に入ったか尋ねる魯山人ですが、その時のヨネ子の答えガ甚く気に入り、彼女をさまざまな『美』の世界に誘うことになります。
 魯山人は『食器は料理のきもの』と云ったそうです。道行く人々を見れば皆さんも気づかれるかもしれません。どのような奇天烈な服でも着こなせる人が着ればお洒落に、魅力的に映ります。一方でどんな高価な人気のある衣装でも、似合わない人が着れば七五三だ、チンドン屋か、と笑われます。魯山人にとっては器は料理の一部であり、調和が取れてこそ、互いの魅力が引き立ち、本当の美味が生まれるのです。
 『かまど』『火』『器』『素材』が一体となることで、料理は芸術へと昇華する、『魯山人のかまど』では、この魯山人の美意識がテーマのようです。

 まだ見ぬ残り三話を待つのももどかしく、今すぐに手に取れる北大路魯山人を知る手掛かりはないかと調べていたところ、なんのことはない。弊店で販売している朗読CD に、魯山人の著書4作があることを思い出しました。

■ 北大路魯山人 『だしの取り方』
■ 北大路魯山人 『握り寿司の名人』
■ 北大路魯山人 『料理の第一歩』
■ 北大路魯山人 『良寛さまの書』
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 すべて短編エッセイだが、短い文章の中に、鮮烈なまでに凝縮されたこだわりと、美への愛情が凝縮されています。私たちの周りにも優れた技術を持つ職人さんや、並外れた識見を持つ文化人ではあるが、どうにも付き合いにくい、どこで怒り出されるかわからないという人が時折おられます。
 ところが、こういう人は冷たいとか、人に対して必ずしも傲慢なわけではないのです。意識が人間関係の方向に向いていない、魯山人で云えば周囲の人がどう感じるか、どう思うかは興味の外のことで、美味しい食事を提供する、自分が納得できる美食の在り方を追求することが全てなのです。

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 『魯山人のかまど』第一話で、魯山人はヨネ子に京都の山奥・和知の由良川を訪ねるように命じます。ここは鮎の産地です。魯山人はヨリ子に旧知の漁師と共に鮎を東京まで運んでくるように命じるのです。
 天然鮎の魅力は、その香味だと云われます。これは鮎が食す苔の薫りに由来し、死んでしまうと、香りも、味も、姿形さえあっという間に衰えるそうです。戦後間もなくで交通網が未発達な日本で、鮎を生きたまま京都の山中から東京まで運ぶ、元気いっぱいのヨリ子もさすがにヘトヘトになってしまいます。
 時の総理大臣・吉田茂を迎え、料理を馳走する魯山人。その真骨頂こそ、この鮎の素焼きでした。吉田茂がもう一尾とねだるのを魯山人は断ります。最初の一尾の鮮烈さに、二尾目は到底敵わない。一尾目を食した感動は薄れ、二尾目を口に入れた瞬間に、あの大切な感動は失われてしまう。「もう一尾焼きましょうか」と尋ねる料理人に、「一尾だけ、これで終い」と魯山人は言い放つのです。



 で一呼吸。まだ疲労から回復せず壁にもたれて眠っているヨリ子をみた魯山は、料理人にヨリ子のためにその一尾を焼くことを料理人に命じます。目覚めたヨリ子はその鮎が吉田茂を袖にした鮎とは知る由もありません。ただただ旨そうにほおばります。


 北大路魯山人が本当はどのような人だったのか、ドラマでどのように描かれようとも、その真実を私たちは知る由もありません。名作漫画『美味しんぼ』の海原雄山(特に初期)のように傲慢不遜で『美』をわからないものに価値なしと考える人だったかもしれませんし、『美』を追求するあまり、感情をコントロールしきれないだけの人だったかもしれません。しかしいずれにしろ、北大路魯山人が自分なりの審美眼を持ち続け、『美』を求めることに対し、他人だけでなく自分自身にも一切の妥協を認めない人であったことは間違いなさそうです。
 付き合いにくい人ではありますが、懐に入ることができれば案外、いろいろなことを学ばせてもらえる人だったような気もします。

 いろいろな個性や信条の人間が共に生きていける・・・自由主義のいちばんありがたいところだと思います。


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