MISIA 『夜を渡る鳥』いい歌です。

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MISIAが2週間ほど前に発表した新曲『夜を渡る鳥』
ひさびさに出会った肩を叩いてくれる歌という感じがします。

だれにでも、どうしようもない現実に行き当たるときがある。
「こんなはずじゃなかった」と思うけど、どうにもならない・・・。
一生懸命、力を尽くし、知恵を絞って、体裁なんてかなぐり捨てて取り組んでいるのに、未来が見えない。
それは暗闇の中を歩んでいるかのようで、
大切な人さえ守れない自分の無力さに、絶望して、恐怖して、こわくて、くるしくて・・・
でも、あきらめることはできない。
自分だけならあきらめられる。
自分だけなら、命だってもういいと思える。
でも、大切な人だけは・・・あるかないかわからない希望でさえ、それをめざすしかない。
夜の闇を飛ぶ鳥のように。

私の言葉で言い換えれば、こんな感じでしょうか。


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 このMISIAが歌う『夜を渡る鳥』は、北方謙三先生の『水滸伝』、通称『北方水滸伝』のドラマ版の主題歌です。作詞を担当した及川眠子は、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の人気曲『残酷な天使のテーゼ』『魂のルフラン』や、やしきたかじんの大ヒット曲『東京』などで知られます。静謐さと余白を活かしたドラマチックな楽曲は、加藤登紀子が作曲しています。
 MISIAの抑えたステメロと徐々に盛り上げていくサビ、ドラマチックで情熱的で、そしてどこか『哀』が漂う歌声がひときわクローズアップされ、大切な誰かを守るために、自分の生きる意味を見失いために、己自信を見失いために、散華する命のきらめきを描き出します。


 本来の『水滸伝』は施耐庵が、中国各地の逸話や英雄伝説をかき集め、編纂した物語と云われています。北宋の時代、官僚や政治家が私腹を肥やす中、不応に蹂躙された人々が、梁山湖の畔に『梁山泊』と呼ばれる砦を築き、官軍相手に一戦交える話です。天に替わって道を行う『替天行道』を旗印に、天罡星36人と地煞星72人、合計108人の英傑が集うのですが、この集ってくる銘々伝が血沸き、肉躍る面白さなのです。

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 ただ『北方水滸伝』はここにアレンジを加えています。銘々伝主体の原作の諸処のエピソードを借りながらも、弱い者の心や家族、命さえも踏みにじる権力者=体制へのレジスタンスの物語として描きなおしました。原作では終末までほぼ死なない108人の英傑も、一人、また一人と、志半ばで斃れていきます。なにもできずに死ぬものもいれば、守りたいものも守れず非業の死を遂げる者もいます。その死はけっして雄々しいものや、華々しいものばかりではありません。グロテスクに嬲り殺しにされたものもいるのです。しかし、大切なことは肉体が滅んでも、彼や彼女が生きた証はちゃんと残されている。衆義堂に赤字で遺された名前には、確かに同じ夢をめざし、歩んだ事実が残っています。

 北方先生が『北方水滸伝』で綴られたもの。それは本当の意味での命の大切さだと思います。『命の価値』といってもいいかもしれません。名声や、金銭や、地位や、そんなものではなく
『あなたはあなた自身の人生に満足したのか。命を使い切ったのか』

そう問いかけられている気がします。

MISIAの『夜を渡る鳥』は、そんな物語のエッセンスを凝縮したような楽曲だと思います。
ミサを思い出すような前奏。語り掛けるように抑えた入り。吟遊詩のような展開・・・そして祈りへと結ぶ。

明日の行方を問いかける瞳に 微笑み返せず そっとうつむく
(中略)
せめて今だけでも 愛しい人が 泣かないで眠れる時をあげたい
雲の隙間 こぼれ落ちる光
ひたすらに探し続けている 夜明けを 未来を

いい曲だと、思います。ぜひ聴いてください。



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