長野県上田市の『無言館』。
館主・窪島誠一郎をはじめ、音楽家・井上鑑、シンガーソングライターの大須賀ひでき、普天間かおりが、2024年に発表したミニアルバムが、静かな人気を博しています。
無言館は、戦没された画学生が遺した絵画や手紙を展示したところです。
彼らは大切な家族、愛する人、希望していた未来・・・すべてを投げうって・・・いや、自分だけはそこにいないかもしれないけれど、自分だけがいない幸せな未来を護るために旅立っていきました。
無言館に遺された絵には、彼らが護りたかった未来が描かれています。
太田章の『和子の像』。これは大切な妹を描いたものだといいます。
伊澤洋の『家族』。きっと戦争前、彼の家庭はこんな日々を送っていたのでしょう。
大貝彌太郎『飛行兵立像』。今、飛び立たんとする特攻兵の姿。覚悟・・・がある。死ぬ覚悟じゃたぶんない。家族を、大切な人を護る覚悟。
そして日高安典『裸婦』。
日高さんは種子島に生まれ、戦時招集により東京美術学校(現東京藝術大学)を繰り上げ卒業。27歳でフィリピン・ルソンで戦死されました。
「生きて帰ったら続きを描く」と恋人に言い遺し、彼は家を出たそうです。
この絵には後日談があります。
50年後、無言館の感想ノートにこんな一文が記されていたそうです。
安典さん、ようやく会いにきました。
あの日のことを忘れていません。
CD『海よ 哭け』は、2011年の東日本大震災をうけて、制作されたといいます。
突如、奪われた未来。本人だけでなく、遺された家族にとっても、それは同じことです。
いや生き続けなければならない部分、その苦しみや葛藤は大きい。
本当はそこにいたはずの人がいない。
手のぬくもりも、少し気に障る笑い声も、いつも投げかけられていた優しいまなざしも。二度と戻らない。
本CD全篇を包み込むように収録された福島の波の音(ね)が、癒すことのできない現実を呼び覚まします。
ロシアのウクライナ侵攻、ガザの虐殺、アメリカとイランの対立、チベットとウイグルの弾圧・・・。
そんな遠くのことを見なくても、陰湿ないじめ、弱者への横暴、いわれなき中傷・・・未来を奪うことは、だれにでもできる。
だれもが被害者になり、加害者になる世の中になった。
二度と取り返せない未来、傷ついたら完全には復元できない未来。
『無言館Project -海よ 哭け-』は、きっと私へは私への、あなたへはあなたへの『声』を届けてくれます。

海よ 哭け -録音日記


