此度、アイヌ神話を今に伝えるカムイユカラ(神が語る叙事詩)と、アイヌ神話物語の朗読CDを取り扱うこととなりました。そこでアイヌ神話について少し紹介してみたいと思います。
【朗読】アイヌ神話とカムイユカラ(CD4枚組)
詳細内容/ご注文
本作では、19歳で早世したアイヌ文化伝承者・知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』より、日本語訳全13編を朗詠。
さらに子どもさんでも楽しんでいただけるよう、わかりやすい物語にしたアイヌ神話14編の朗読を収録しています。
北海道や樺太、千島列島周辺に古くから暮らす先住民族 アイヌ。
自然界のすべてに魂(ラマッ)が宿り、カムイ(神)が存在すると考える民族で、その工芸品は深い信仰と美の結晶と云われます。独自の言語と神話を継承する民族でしたが、明治以降の同化政策で土地、言語、生活が大きく制限され、今に至っています。2020年に『先住民族』と規定され、言語復興や伝統芸能、工芸、儀礼の再評価と復興が進みつつあります。
本来のアイヌは、ヒグマやシカの狩猟、鮭や海獣類の漁労、山林での採集などを基盤に、コタンという集落単位で生活されていたようです。季節の移ろいと生活リズムが一致した、正に『自然と共に歩む民』がアイヌ民族だったようです。
アイヌ神話の世界に深く共鳴するには、次の二つの思想が大切です。
一つ。自然界のすべて=有機物、無機物を問わず魂(ラマッ)と人格が宿る。
二つ。アイヌの神(カムイ)は人間よりも強く、尊い存在だが、人間と交流し、時に助け、時に試す。
すべての魂は循環し、世界は常に更新され続けます。
カムイは、火、水、風、動物、植物、道具に至るまですべてのものに存在します。家の守護神で、炉を護る火の女神 アペフチカムイや、山の神はヒグマの神 キムンカムイ。海の神はシャチの神でレプンカムイ。イタズラ好きで人間と距離が近いキツネの神はフレシカムイ、夜を司り知恵の象徴であるシマフクロウの神 コタンコロカムイは村を守るとされます。
有名なイヨマンテ(イオマンテ)、別名・熊送りの祭りは、毛皮をまといクマの姿となって人間界に遊びにきたカムイが、肉体と毛皮を贈りものに残し、神の世界に還っていく祀りです。
ユカラとは、アイヌ語で『語る』『物語る』『叙事詩を歌う』の意味を持ちます。
大きくは、人間が語る英雄叙事詩『アイヌユカラ』と、神が一人称で語る神謡『カムイユカラ』があります。アイヌ神話は文書ではなく、この『カムイユカラ』により、口承で伝えられてきました。
「私は○○カムイである」から始まるカムイユカラでは、語り部は神の声を下す媒介者となります。
フクロウの神 コタンコロカムイや、熊の神 キムンカムイ、鮭の神 シペカムイなど主に動物カムイが、語り部を媒介に、人々に神の物語を話して聴かすのです。声や節回し、定型句、リズムなどを駆使して語られる神謡。それはまるで音楽や歌を聴くような趣を与えます。

アイヌ神話は、神自身が語る神の物語です。神が語るのですから、当然、人間が中心の物語にはなりません。アイヌの神々が主体の物語、神すなわち北海道の大自然の摂理と倫理に基づいて語る物語です。
もしあなたが、アイヌ神話の中に私たちとは異なる価値観を見つけられたならば、それこそ、アイヌの人々が大切にする大自然の価値観、世界の循環なのかもしれません。





