クマの襲撃は昔も! DVD『羆嵐 -三毛別羆事件-』

羆嵐 -三毛別羆事件- ドラマ/映画
ドラマ『羆嵐』

2025年末。清水寺で発表される『今年の漢字』は『熊』でした。
それほどに、クマによる人間襲撃が目立った年でした。もちろん、クマによる人間襲撃はこれが初めてではありません。

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羆嵐/私は怪魚をみた

1915年の三毛別羆事件、1970年の福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件、1976年の風不死岳事件、2000年以降でも乗鞍岳クマ襲撃事件、秋田八幡平クマ牧場事件、十和利山熊襲撃事件など結構な事件が起こっています。

羆嵐 -三毛別ひぐま事件より- (DVD)

中でも1915年(大正4年)12月に起こった三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)は被害の大きさと凄惨さで知られています。
今回発売のDVD『羆嵐』は、この三毛別羆事件を描いた吉村昭の小説『羆嵐』を原作に1980年に制作されました。
演出は降旗康男。三國連太郎、森田健作など出演で、『木曜ゴールデンドラマ』の2時間枠で放送されました。


三毛別羆事件のあらまし
北海道苫前郡苫前村三毛別

北海道苫前郡苫前村三毛別

 死者は胎児を含む8名、負傷者は3名。
襲ったのは体長2・7メートル、体重340キロ、冬眠に失敗し、空腹で狂暴化したヒグマでした。
ヒグマが襲ったのは、北海道苫前郡苫前村三毛別(現:苫前町三渓)六線沢。民家15件ほどの小さな開拓村でした。
ヒグマは最初に留守番の女性と子供を襲ったそうです。
夫が帰ると子供は既に絶命し、妻はヒグマによって何処かに引き摺られていった形跡がありました。
翌日、捜索隊が妻と思われる遺体を発見。
膝下の脚と頭蓋の一部しか残されておらず、捜索隊の一人が
「おっかあが、少しになっている」と口をゆがめたと云います。

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 さらにヒグマは彼女たちの通夜の席に出現。
ドラマではここで更に犠牲者が出ますが、実際には殆ど参列がなく、幸運にも犠牲者は出ませんでした。

 ところがその20分後、この家に一番近い住居にヒグマが出現。当時、家にいた11人を襲いました。
3名の子どもと妊婦が1名、胎児と共に殺害されましたが、特に凄惨を極めたのが妊婦でした。
雑穀俵の陰に潜んで危うく生きながらえた少年の証言では、
「腹、破らんでくれ」と何度もヒグマに懇願していたといいます。
骨を砕く音が響きわたり、少年はあまりの恐怖に気を失ったと云います。

 後に発見された遺体は上半身を食いつくされ、胎児も引きずり出されていたと記録には残っています。

郷土資料館・三毛別ヒグマ事件展示物

郷土資料館より

 通報後、北海道庁警察部(現在の北海道警察)は討伐隊を組織。
続いて陸軍歩兵第28連隊30名が到着するも、その間もヒグマ被害は続い、家屋侵入は8件に及びました。
官民合わせて延べ600人、アイヌ犬10頭以上、鉄砲60丁以上を投入してもなお、ヒグマを駆除できない状況が続きましたが、当時57歳だった熊撃ちの名手・山本兵吉(ドラマでは山岡銀三郎/三國連太郎)がヒグマ駆除のため、別行動を開始。
結果的に、ヒグマが討伐隊に警戒心を向けている間隙をついて、至近距離に接近し、駆除に成功したと記録には残されています。

 後に解剖されたヒグマの胃袋からは、人肉や衣服などが発見。
解剖を見物した複数の人から、このヒグマが最初の襲撃の数日前に既に3人の女性を捕食した個体だとの証言が得られます。
このヒグマが、被害者の中でも子どもより成人女性を好んで食したのは、それが原因だったようです。


 昨年、熊被害を巡って、熊の駆除を求める人々と、動物愛護の精神を訴える人々の間で論争が起こりました。
ヒグマほどの凶暴性はなく、クマ全体が人を襲うわけではありません。
それでもなお、クマは猛獣であり、簡単に私たちの命を奪える存在です。
クマの被害を食い止めるには、特に一度でも人間を襲ったクマについては、駆除=殺処分もやむなしであると思います。
一度人間を襲った個体は再び同じ行動を起こすことは、前述の『三毛別羆事件』でも証明されています。

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 一方で長期スパンで考えれば、やはり人間による自然への浸食が生み出した悲劇であることも真実だと思います。
戦後、科学が発展するにつれ、私たちは自然や未知への怖れを失い、他の存在と向き合う謙虚さも失いました。
他の領域に土足で上がり込み、身勝手な理屈で不犯の境界線を安易にまたいでしまう・・・。

 自然とのつきあいにはやはり、『怖れ』と『敬意』が必要な気がします。
加えて『今』に対応する判断力と、『未来』の再発を防ぐ長期的視野。
そうすることで、もっとも利が通った無理のない自然との共存ができる気がします。
・・・なぁ~んてな(^^)