藤田まこと演じる中村主水が登場する『必殺シリーズ』。
人にもよりますが最高傑作の呼び声高いのが第2作『必殺仕置人』です。
現在、弊店でもBlu-ray BOXが人気を呼んでいます。
仕置人メンバー5人のうち、諜報担当の掏摸のおきん(野川由美子)と瓦版やの半次(津坂匡章)もい味を出していますが、やはり出色は、毛色の異なる魅力と、殺し技を駆使する3人の実務担当たちでしょう。
演じるは苦みばしった表情と、ぶっきらぼうだがどこか冷たくなりきれない男の色気漂う山崎努。
乱暴な河内山宗俊ともいうべき位置づけだろうか。
もともとは僧侶だったが女犯の罪で佐渡送りへ。江戸へ舞い戻ってからは、観音長屋の接骨師として生計を立てている。
誤解のないように云っておくと、前述の女犯はレイプではない。
後に『新・必殺仕置人』最終回で、鉄は岡場所で女郎と睦みあいながら死んでいく。
彼は情に流されず、金と己の美学で動くニヒリストではあるが、他者の痛みや苦しみを感じない不感症とは違う。
いずれ己は地獄行き。くよくよ悩まず、いい女に会えば情を交わし、旨いものがあれば食らう。
己に後悔がないように生きた結果、僧侶としてはアウト!だった・・・というだけのことだ。
ちなみに殺し技の『骨外し』はレントゲン映像を駆使した時代劇とは思えない衝撃の演出で大人気となった。
後に大人気を得る『簪の秀(三田村邦彦)』の原型とも云うべき存在。
同僚の鉄や主水とは異なり、若さゆえにまだまだ正義感と青臭さを残す。『仕置人』の良心とも云うべき存在を沖雅也が演じた。
平時は観音長屋に住む棺桶職人だが、殺しの際には手製の手槍を使用する。錠には、父親が琉球(沖縄)からの流れ者という設定がある。
この手槍は琉球古武術の獲物『ローチン』をモチーフにしており、錠はこの手槍の二分割して、胸元に潜ませている。いざというときは、これを繋ぎ合わせ、一本の短い槍として使うのだ。
後期必殺では、平時の仕事道具を殺しに使う者も多かったが、錠はあくまで裏稼業は裏稼業。
道具を変えることでも、己のスタンスにケジメをつけたのではないだろうか?
後に必殺シリーズの代名詞となる中村主水だが、本作ではあくまで第三の男。
『仕置人』の狡猾な参謀。もっとも嫌らしく、表裏のある保身第一の冷徹でドライな存在として描かれている。
演じるのは『てなもんや三度笠』で喜劇役者のイメージがあった藤田まこと。
奉行所では昼行燈とよばれ、街中では笑顔で賂(まいない)をもらい、家庭では婿養子として尻に敷かれる一方で、彼は冷徹に仕事の成否を判断し、依頼金の額を確かめ、淡々と標的を追い詰め、必要とあらば斬って捨てる。
そこには一片のしがらみもなく、悔いもなく、達成感さえもない。
ただ依頼があり、依頼金があり、仕置きされて当然の奴だから、仕置きする。
生き残るのに感情は不用・・・。

この『必殺仕置人』、
『だれ一人として正義の味方を気取っていない』のが最大の魅力です。
それぞれが独立した個性と価値観を持ちながら、『金儲け』と『殺されても文句言えない奴もいる』
・・・この2点だけで繋がり、協力する関係。
互いに完全には信じ切らない緊張関係を背景に、それでも協力しないと仕置きが完成しない現実があるから、『仲間』として行動する。
まさにビジネスなのですが、その奥深くには依頼者たちの苦しみと涙が見え隠れします。
『必殺仕置人』の本放送は1973年(昭和48年)。
テレビ局には「人殺しを主人公にするな」という苦情が何通も届いたと云います。
それでも、『綺麗事の一切ない現実。剥き出しの人間ドラマ』は人々の支持を得ました。
時代劇と云うフィクションの中に描かれた世間の不条理への持って生きようのない怒り。
溜まりに溜まったわだかまりを、『仕置き』というシーンに凝縮させ、爆発させるカタルシス。
これが『必殺仕置人』が、傑作時代劇たる由縁だったのかもしれません。
《参考》
●時代小説/時代劇原作 朗読CD
●時代劇/チャンバラDVD/Blu-ray
●時代劇主題歌/股旅演歌CD
◎鬼平犯科帳 DVD/朗読CD一覧
◎はやわかり!清水次郎長伝
◎忠臣蔵/四十七赤穂義士事典
◎山本周五郎の世界
◎藤沢周平の世界
◎武道/古武術/格闘技&日本刀






