J.S.バッハ『クリスマス・オラトリオ』ってなに?

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 『クリスマス・オラトリオ』は、ヨハン・セバスティアン・バッハ(以下 バッハ)が、1734年に作曲した全6部からなる宗教音楽です。キリストの降誕から顕現節までの物語を祝祭的に描いた音楽劇で、既にあった世俗カンタータを転用する『パロディ』という編曲技法を多用して制作されました。
カンタータ(交声曲)とは、独唱や重唱、合唱、さらに器楽伴奏から成る大規模な声楽曲を指します。
バッハの『クリスマス・オラトリオ』は、複数のカンタータを再構成し、『イエス・キリストの誕生』という物語性を持つ大規模な劇音楽に仕上げています。現在も世界中でクリスマスシーズンに演奏されるクリスマスの代表的な大作です。


なぜ『クリスマス・オラトリオ』が制作されたのか?

[X'mas Song] J.S.バッハ 『クリスマス・オラトリオ BWV248』全6部64曲(CD2枚組)

『クリスマス・オラトリオ』全6部64曲

 当時、バッハはライプツィヒ聖トーマス教会のカントル=音楽監督の任にありました。
クリスマスから続く6つの祝日、12月25日(降誕当日)、12月26日(第2祝日)、12月27日(第3祝日)、1月1日(元旦)、1月2日(新年後主日)、1月6日(顕現節)には、大規模な音楽を演奏する伝統があり、彼は6つの礼拝用音楽を用意する必要があったのです。

 そこでバッハが思いついたのが、既に作曲済の世俗カンタータ(教会の礼拝向け以外のカンタータ)を編曲し、再利用するだけでなく、定番曲として繰り返し使うことでした。この編曲=パロディには、世俗曲としての歌詞を聖書の内容に合うように書き換えるという作業も必要でしたが、バッハは長年、協業関係にあった詩人ピカンダーの協力で解決したと云われています。


クリスマス・オラトリオの構成
声楽系統図

声楽系統図

 クリスマスを祝うための音楽『クリスマス・オラトリオ』には、キリスト降誕の物語を音楽によって生き生きと再現し、人々に聖書の教えを伝える役割がありました。
 喜びにあふれたトランペットやティンパニの響きは祝祭の象徴で、救い主の誕生を祝う華やかな雰囲気を演出しました。福音史家による聖書の朗読(レチタティーヴォ)と、瞑想的なアリアやコラール(合唱)を組み合わせることで、信徒たちの団結心/一体感を高め、信仰を深める構成がとられました。

アーノンクールの『クリスマス・オラトリオ』BWV248/全曲:J.S.バッハ(CD2枚組)

アーノンクールの『クリスマス・オラトリオ』

 6日間(全6部)が次のように演奏されました。

 第1部:12月25日(降誕当日)・・・キリストの誕生
 第2部:12月26日(第2祝日)・・・・羊飼いへのお告げ
 第3部:12月27日(第3祝日)・・・・羊飼いたちの礼拝
 第4部:1月1日(元旦)・・・・・・・・・キリストの割礼と命名
 第5部:1月2日(新年後主日)・・・・東方の三博士の到来
 第6部:1月6日(顕現節)・・・・・・・・三博士の礼拝


クリスマス・オラトリオの聴き処/代表曲
J.S.バッハ作曲 クリスマス・オラトリオ~全曲版(DVD2枚組)

クリスマス・オラトリオ(DVD2枚組)

合唱『歓呼の声をあげよ、喜び踊れ』(第1部冒頭)
 全曲の幕開けを飾る。トランペットの音色とティンパニの連打から始まる華やかな祝祭の合唱曲。
第10番『シンフォニア』(第2部冒頭)
 器楽曲。羊飼いが野原で奏でる笛の音を模した、牧歌的で穏やかな名曲。
アリア『私はただあなたの栄光のために生きる』(第4部)
 アルト独唱。信仰者が『自分の生はただ神の栄光のためにある』ことを誓う、内面的で敬虔なアリア。
 穏やかで流麗な旋律が深い信仰心を醸し出す。
第39番『エコー・アリア』(第4部終盤)
 テノールの独唱と舞台裏からのエコー・パートで構成。
 空間的な奥行きを暗示させる技巧的で美しいアリアで、救い主の名が恐れを呼ぶのか、慰めを与えるのかを問いかける。
第64番『終曲コラール』(第6部最終曲)
 全体を締めくくる荘厳な合唱。四声合唱の形式で、参加者全員で歌う。
 降誕から顕現節までの物語を『教会員皆の祈り』として結晶させる。トランペットの旋律が印象的。

★第64番『終曲コラール』には、ハスラー作曲の『心から我は願う』が用いられている。この旋律はイエス・キリストの死と復活を綴った『マタイ受難曲』でも用いられ、キリストの誕生と死が不可分であることを示唆している。


『クリスマス・オラトリオ』はけっこうおもしろい!
J.S.バッハの『クリスマス・オラトリオ』:カール・リヒター指揮(CD3枚組)

カール・リヒターのクリスマス・オラトリオ

 バッハの『クリスマス・オラトリオ』は、全6部からなる祝祭音楽です。
その最大の魅力は『喜びを分かち合う祝祭感』と『静かな祈り』の対比にあると云われます。

 冒頭のティンパニとトランペットが響き渡る合唱『歓呼の声を放て、喜び踊れ』は、寒さを吹き飛ばすような高揚感に満ちています。第2部の第10番『シンフォニア」では、牧歌的なオーボエの調べが羊飼いたちが夜を守る静謐な情景を想起させ、深い安らぎを与えてくれます。この印象の変化がイエス・キリスト誕生の物語を紡いでいきます。
 また、『クリスマス・オラトリオ』はもともと、前述のとおり降誕祭から顕現節まで、6回に分けて演奏されました。ですので今年はもう遅いかもしれませんが、一度に全曲を聴き通すだけでなく、アドベントから年明けにかけて、物語を一歩ずつ読み進めるように、少しずつ聴き進めるのも、楽しい経験になるかもしれません。
 バッハが遺してくれた色彩豊かな音の装飾。キリスト教徒でない方も是非お味わいください。


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