仲代達矢さんを偲んで

仲代達矢を偲んで ドラマ/映画
仲代達矢を偲んで

俳優の仲代達矢さんが11月8日にお亡くなりになられました。

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大地の子

戦争を知る名優がまた一人逝かれました。

抑制された感情の奥底に、深い情念を滲ませる『静』の演技。
仲代達矢さんという俳優さんについて調べてみると、そんな表現をよく見かけます。
確かに『大地の子』『拝領妻始末』など脇に回ったときは、そんな印象も強いです。
ただ個人的には「本当にそうなのかな?」という疑問を感じています。


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仲代さんが出演された名画は数多いですが、
私にとって映画のワンシーンがよく頭に浮かぶのは下記のような作品たちです
切腹
人間の條件
熱海殺人事件
鬼龍院花子の生涯

北の蛍
海辺のリア

どの作品の仲代さんも、『静の演技』『抑制した・・・』という表現が的確なのかどうか。
むしろ私は、『静』ではなく『狂』、そのように感じていました。
煌々と見開かれた二つの眼にはどこか、常識をいつでも飛び越えそうな狂気があったような気がします。

『狂』とはなにも、大声で取り乱したり、泣き叫んだりする気狂いばかりを指すわけではないと思います。
『狂』とは当然ではない思いや行動、常軌を逸した判断、計算を超えた行いです。

『熱海殺人事件』
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の二階堂警部の振舞はまさしく見るからに『狂』ですが、『乱』『海辺のリア』で、老い故に自らを追い込み、我を失う姿もまた必然の『狂』だと思います。
狂わざるを得なかった人間の悲哀と怒りがそこには存在します。
『北の蛍』『鬼龍院花子の生涯』で演じた常軌を逸した生きざまで無残に朽ち果てる・・・これも『狂』でしょう。
理が通り、利を得られる路が他にあるのに選ばない。自ら望んで滅びの道を歩むのです。
『人間の條件』もそうです。
戦時中の極限状態でせんなき正義に拘る無力さ、惨めさ・・・常の精神状態ではありえない選択ではないでしょうか。
感情を押し殺した演技で独特の緊張感を漂わせた『切腹』でさえ、権威へのやるせない怒りや憎悪を内に秘め、淡々と武の最高峰・井伊家の非を非難する。
主人公の半四郎は己の行為がなんの変化も与えず、ただの暴発にすぎないことを知っていて敢えて暴挙に出ます。
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つかこうへい『熱海殺人事件』

ああ、これが真の姿だ、人間というものは。裸で震える哀れな獣にすぎんのだ

シェークスピア『リア王』の一節です。
権威や、体裁や、常識や、世間体や、そんな鎧を剝ぎとった後、最後に残る人間の本質。
それが『狂』という姿で現れるのではないでしょうか。
誤解を恐れず云えば『狂』こそが、『自分自身が全ての束縛から解放され、己を貫く手段』ではないか。

『狂』あらずんば、『人』足り得ず

仲代達矢が演じたものは、『狂』を通じて浮かび上がった人間の本性=その人間の魂だったようにも思うのです。


拝領妻始末

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