近頃時折、民謡が聴きたいという高齢のお客さまがご来店くださいます。
テレビでも民謡を歌う演歌歌手はおられるが、どこか違うのだといわれます。洗練され過ぎているというか、完成され過ぎているのかもしれません。
もちろんプロの歌手さんですから、一般人と同じレベルではお金は取れません。
それでも、民謡や抒情歌は上手か下手かより、胸に届くかが大切な気がします。培った実力を懐に忍ばせ、愉快にあったかく、それが民謡のよさのように思うのです。

此度、弊店ではCD『越中五箇山の民謡』の取扱いを開始しました。
五箇山は、富山県南砺市の山深い地域で、規模は小さいですが9軒ほどの合掌造り集落が残っています。白川郷と共に、日本の原風景を伝える貴重な文化遺産でもあります。
この地の民謡は、素朴でありながら雅な響きを持ち、田楽や祭礼と深く結びついています。土地柄故に外界と遮断されがちで、その生活環境が民謡の純粋性、精神性を育んだようです。
その音楽は、田楽や放下僧芸能の流れを汲み、農耕儀礼や祭礼と密接に結びついています。
特に白山宮の祭礼では、『こきりこ節』や『神楽舞』『獅子舞』の歌と踊りが奉納され、五穀豊穣を祈ります。五箇山では、民謡がより宗教的性格を帯びるのです。
五箇山民謡では、富山三大民謡のうちの2曲、『こきりこ節』と『麦屋節』がよく知られています(後の一曲は越中おわら節)。
『こきりこ節(コキリコ節)』は日本最古の民謡と云われ、平安~鎌倉の田楽の面影を残します。108枚の竹板をつないだ打楽器・ささらや、筑後竹(七寸五分の小竹)を打ち鳴らしつつ踊ります。
「コキリコの小竹は七寸五分じゃ♪」「マドのサンサはデデレコデン」という独特の歌詞が耳に残ります。素朴でありながら幻想的な響きを持ち、昭和期の小学校の運動会ではよく踊られました。
『麦屋節』は哀愁を帯びた旋律と力強い歌唱が特徴の民謡で、もとは麦刈りの労働歌でした。近年は三味線や太鼓を伴奏に用い、踊りも洗練化され、舞台芸術的な調和のある楽曲になっています。

うたおぅ!カラオケ民謡vol.1
五箇山の民謡は、単純な旋律の中に深い情感と祈りを宿しています。
よりテクニカルに、よりスタイリッシュに発展した現代音楽とは、たぶん一線を画す部分があると思います。一方で、ともに人々に受け入れられ、今も愛され続けている以上、不変の共通性もあるに違いありません。
「民謡なんて・・・」という方もおられるでしょうが、一度じっくり、できれば現地で踊りや演奏を見つつ愉しんでいただければ、と思います。
CD屋が云うのはおかしいのですが、民謡にはその土地、住んでいる人々の心が詰まっています。
きっと新しい発見、出会いがあるような気がします。




