米中会議で話題 レアア-スってなに?

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てんちょ-時事放談

10/30、韓国釜山で行われた米中会談。
関税で揺さぶりをかけるアメリカに、レアア-ス禁輸で応戦した中国。さらに関税率UPで対抗するアメリカという図式でした。

共に核保有国である以上、両国とも直接の軍事衝突を望まず、覇権闘争は経済戦争にならざるを得ません。
決着は中国がレアアース禁輸を1年間猶予し、アメリカは関税率UPを見送るという引き分けに終わったようです。
今後1年間を使って、アメリカはレアア-スの中国依存の低下を諮り、中国は輸出輸入に関するアメリカ依存の低下を諮ると思われます。

ところで、このレアア-ス。半導体制作に不可欠と云われますが、なんのこっちゃ?という方も少なくないようです。
そこで今回は、レアア-スについて、自分の勉強も兼ねて、簡単にご紹介したいと思います。


レアアースってなに?

『レアアース』は日本語では希土類元素と呼ばれます。
ご存知の方も多いと思いますが、単一の鉱物ではなく、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド系15元素の合計17の金属元素の総称です。
ハイテク製品、とりわけ半導体生産に必要不可欠な素材で、磁石・発光・触媒などの特性を持ちます。
具体的にはスカンジウム(Sc)は軽量で高強度のため、航空機やスポーツ用品に使用されます。
イットリウム(Y)はレーザー、超伝導体、ディスプレイ材料となります。
ランタノイド系15元素には ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が含まれます。
特にネオジムはネオジム磁石の材料となります。ネオジム磁石は現在、ダントツで半導体生産に必要な素材です。


レアア-スは何処でとれるの?

中国レアアース産出地

中国レアアース産出地

現在、世界のレアアース生産の70%を中国が占めます。
広大な中国でも、産出地は、内モンゴル自治区の白雲鄂博(バヤンオボー)鉱山、江西省南部、四川省が中心です。
特に内モンゴルの白雲鄂博鉱山は世界最大のレアアース鉱床として知られ、先述のネオジムなどが採掘されています。
白雲鄂博鉱山は世界有数の鉄鉱石鉱山でもあり、副産物としてレアアースを大量に産出するため、コスト面でも優位性があると云われています。
実のところ、アメリカ・カリフォルニア州や、オーストラリア、ミャンマー(旧ビルマ)もそれなりの生産をしており、ブラジル、カナダ、インドなどにも潜在的埋蔵量は多いと云われますが、現時点では生産量は伸びていません。
これには次項で後述する精錬/精製問題が大きいと云われています。


レアア-スの精錬ってどういうこと?

『現代の石油』『経済安全保障の心臓部』とさえ呼ばれるレアアースがありながら、掘らない、精錬しない国が多い理由は、精錬/精製に伴う環境負荷、コスト、技術力、政策判断によると思われます。
精錬とは金属素材を鉱石から取り出す工程を指し、精製とは不純物を取り除いて純度を高める工程を指します。
共にレアアースを実際に使用するために必要な工程ですが、この90%以上を中国が担っています。
例えばカリフォルニアのレアアース生産は全体の約14%を占めますが、精錬は中国依存の状態です。
これはレアアースの精錬には放射性廃棄物や汚染水が発生するため、先進国では規制が厳しく、採算が合いにくいから。
また精錬技術の経験が中国に集中しているため、技術やコスト面での差が大きいからと云われています。
また精錬施設の運営には長期投資が必要な為、政情の安定が不可欠です。ミャンマーやアフリカ諸国はこれがネックになります。


日本のレアア-ス対策って大丈夫?

2010年の中国のレアアース禁輸措置を契機に、日本では経済産業省やJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の指導の元、さまざまな対策を行いました。
2025年現在レアア-ス使用量そのものがピーク時の約半分、中国への依存も約90%から約60%程度に減少しています。
対策としては下記のようなものが挙げられます。

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1.代替技術/代替磁石の開発
『レアアースフリー磁石』『重希土類フリー技術』『ナノテク応用材料』などの代替技術開発を指します。
日立製作所などによるネオジムを使用しないフェライト磁石の高性能化。
電磁石の実用化。
マツダ自動車などのEV自動車向け省ジスプロシウム型磁石の開発。
ヤマハ発動機などでもセリウムなどのレアア-ス使用量を減らした排ガス触媒を開発したそうです。

2.都市鉱山を含むリサイクル技術の開発
1990年代後半からバブル期に『Japan As No.1』と評された日本経済。その牽引役が半導体でした。
そのため日本には使用済=ゴミとなった製品に多くのレアアースが隠れていました。
地域や学校、職場などで使わんくなった携帯電話や電化製品が集められた記憶はないでしょうか?
集められた使用済製品からレアアースを回収するリサイクル技術の確立、さらにネオジム磁石の再利用などを進めることで、国内資源循環が強化されました。

3.供給源(輸入元)の多様化
ベトナム、インド、オーストラリア、カザフスタンなどと連携。さらにオーストラリアのライナス社と共に精製拠点も確保しています。また南鳥島周辺の海底資源調査も進行中とされています。

4.戦略的備蓄の国家的推進
JOGMECを通じ、海外鉱山投資や備蓄事業も推進されています。


今後の課題

レアアースの一時的不足を補う対応が進んでいるとされる日本ですが、ハイブリッド車を含むEV自動車、発電施設、コンピューター、さまざまな電子機器の需要拡大に伴い、レアアースの必要性は依然継続されると予測されています。
また先進国である日本では、環境負荷低減や供給安定性向上、コスト削減も求められるため、資源外交と技術革新、両輪での更なる対応が求められています。
インドが資源開発公社(IREL)に、日本への輸出を停止し、国内供給に回すよう求めた、という報道もされており、資源ナショナリズムにもますます拍車がかかることでしょう。
今回の米中会談は、資源戦争の物語の途中経過にすぎないのかもしれません。