平和だからこそ・・・『ぞうれっしゃがやってきた』

二度と原爆が落ちない世界に! 音楽を語ってみた
二度と原爆が落ちない世界に!

『ぞうれっしゃがやってきた』というお話があります。
これは名古屋の東山動物園での実話を元に造られたお話で、合唱構成=合唱組曲のかたちで知られています。

【絵本+DVD】ぞうれっしゃがやってきた《合唱構成》 -命と平和のおはなし-(絵本+DVD)

【絵本+DVD】ぞうれっしゃがやってきた

今年は、小学校や幼稚園、保育園でも平和教育が盛んで、このお話がたびたび教材として用いられると聞きました。
この作品は、戦争の悲劇に焦点をあてる以上に、平和がどれだけ多くの喜びを人々に与えてくれるか、を伝えるお話です。
弊店では3種類の作品を扱っています。

絵本と紙芝居DVDのセット商品
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模範合唱&カラオケCDと楽譜のセット(児童/生徒向)

下記、いくつかに分けてご紹介します。


1.あらすじ

合唱構成・象列車がやってきた -平和へのメッセージ-(楽譜+CD)

合唱構成・象列車がやってきた(楽譜+CD)

サーカスの人気者だった4頭のゾウ。
戦火拡大で興行も厳しくなり、名古屋の東山動物園に譲られることになります。
あっという間に子供たちの人気者になった4頭ですが、空襲が始まると、人々は口をそろえて
「動物たちを殺してしまえ!」と言い始めました。
空襲で檻が壊れて猛獣たちが市民に危害を与えたらどうするんだ!
人間が食えないのに動物に食わすエサなんてない!

でも動物園で働く人々は知っていました。この4頭のゾウは決して人間を襲わないと。
サーカス育ちの4頭は人間に家族として大切にされ、愛されて育ってきました。
事情も知らない人たちに「殺せ!」と云われて、どうして殺すことができるでしょうか!?
職員たちは必死にゾウのエサをかき集め、エルドーとマカニー、2頭だけは終戦まで命を長らえることができたのです。

[児童・生徒の合唱劇] 象列車がやってきた~カラオケ付(楽譜書籍+CD)

[児童・生徒の合唱劇] 象列車がやってきた


けれど日本各地では、ゾウはみんな殺されたり、餓死したり、もう残っていませんでした。
「ゾウを貸してください!」
日本全国から声が寄せられますが、エルドーもマカニーも高齢です。戦争の影響で弱ってもいました。
悩んだ大人たちは一計を案じます。
名古屋の東山動物園にゾウを見に行くぞうれっしゃを走らせよう。
日本中の子供たちがゾウを見にこれるようにしよう。
こどもたちの笑顔のために、今、ぞうれっしゃが走り始めます・・・!!!


2.なぜ合唱構成なのか?
『ぞうれっしゃがやってきた』が合唱構成で広められたのは、やはり『共有』『深い記憶』が目的だったと思います。
作曲者の藤村記一郎氏は、小学校教員として音楽教育に関わっていた人物でした。
子供も親や、地域の人々も、皆が声を合わせて共に歌いやすいように、シンプルで歌いやすい旋律を心掛けたと云います。
組曲の各曲が比較的短いのもそのような配慮からでしょう。
ストーリーはナレーションで説明し、感情や心の動きを歌=合唱で表現する。
ただ聴くだけでなく、声を合わせて歌うことで、平和や命への大切さを心に刻ませたい
そんな思いを感じるのは私だけでしょうか。


3.『ぞうれっしゃがやってきた』から思うこと

ドキュメント 東京大空襲~60年目の被災地図(DVD)

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この話を知ったとき、真っ先に思い浮かんだのは、戦時中の上野動物園を描いた『かわいそうなゾウ』でした。
上野動物園ではゾウはすべて殺されました。
皮膚の厚いゾウが毒殺が不可能で飢え死させるしかなかった。
我が子のように慈しみ育ててきた飼育員たちは彼らが弱っていく様子を眺めているしかなかった。
ゾウにとっても、人間にとってもこんな残酷な光景はありません。
でも昼夜、空襲の危険に晒される首都・東京で彼らの行動を責めることなどできません。
一番つらかったのは、間違いなく彼ら自身なのです。

名古屋も空襲で灰燼に化したと聞きます。
その中で2頭とはいえゾウが生き永らえたのは、奇跡といってよいでしょう。
この物語はそのゾウとこどもたちの再会をクライマックスに持ってきています。
悲しい別れではなく、うれしい再会で締めくくっている。
平和になったからこそ、手に入れられた『笑顔』で物語を締めくくっている。
そこに新しい平和教育への道標が隠されている気がします。


『平和を保つ』『日本人の命をけっして戦争で失わない』
戦後の政治家たちはこのことだけは同じ気持ちだったと聞きます。
日米安保を締結した吉田茂さんも、安保改定に取り組んだ岸信介さんも、核兵器の日本持込を黙認した佐藤栄作さんも、非核三原則厳守を叫び続けた社会党さんや共産党さんも、手法は異なりますが、目的は同じ。
けっして日本人の命を戦争で失わない、一番大切だったことはそれだったように思います。

この理想と手法の食い違いは、何処の国でもこれまでも、これからも大きな課題になるでしょう。
人間に欲と猜疑心と不安がある限り、兵器を持たなかったら戦争に巻き込まれない、核を持たなかったら核の被害にあわない、は私は幻想だと思っています。
でも同時に、兵器も核も持たなければ・・・と思う人たちの理想を否定することもできません。

『平和が一番、大切なんだ』
『ぞうれっしゃがやってきた』は、手法を越えて、みんなが一致すべき目標を示してくれる作品だと思います。


戦争/平和/原爆 ドキュメンタリー