
1990年に死去した喜劇王・藤山寛美さん。
松竹新喜劇の金看板として活躍した大スターです。
『宵越しの金は持たない』を地でいき、1966年には1億8千万円の借金を抱え自己破産しています。
1966年から2025年の物価上昇率は約8~10倍ですから、現代の貨幣価値だと15億~18億になります。
人間一人の借金とは到底思えません。
この借金を松竹が肩代わりして舞台に復帰。
以後20年間無休で舞台に立ち続けたというからこれも異常です。
寛美さんの松竹新喜劇は、FUNNY ではなく INTEREST。
人間という存在へのおもしろさが主題です。
まじめに一生懸命だから生まれるズレや違和感、落語のおもしろさに似ているのかもしれません。
『笑い』の中に、『哀』や『愛』があります。
『強さ』の陰に、人を思いやる『優しさ』が忍んでいます。
魅力的な人間は割り切れない、余りが溢れ出る人間なんだと思います。
抽象的でごめんなさい。
うまく説明できないので、上記の表現がわかっていただけそうな作品を3つ、オススメします。
この話は、今は口もきかない、行き来もしない間柄となってしまった魚屋の兄弟の話です。
兄(藤山寛美)は本家魚惣を名乗り、弟は本店魚惣を名乗っています。
喧嘩のきっかけはだれも知りません。
兄は嫁の妹の縁談を、弟は実の妹の縁談を調えようとするのですが、実は狙いが同じ男。
更に悪いのが間に入る金魚屋の高橋さん。
初代・博多淡海さんが演じているのですが、この人、気が弱いので、喧嘩っ早い二人に挟まれ右往左往。
兄にいい顔すれば、弟に笑顔で返すものだから、反って話がややこしくなります。
義妹と妹はもともと友達だからこれも間に挟まれ困惑気味。
弟の嫁が兄に直談判するが・・・×。
二進も三進もいかないところに届けられたのが、数年前に死んだ母の遺品。
そう云えば二人の仲がおかしくなったのはあの頃からか?
兄の後悔と弟の後悔、強がる気持ちが生んだ行き違い、溶かすは母の親心。
或る雪の夜、失業中の浜本恵一は、同じく職がない宇田信吉(藤山寛美)と出会います。
世を拗ねかけていた二人ですが、励まし合い、5年間頑張って、再会しようと約束します。
5年後、正直でまじめな啓一は商家『丹波屋』に婿入り、今は社長として活躍しています。
信吉のことは片時も忘れておらず、再会の日を楽しみに日夜励んでいます。
一方、信吉は不運が重なり、双六で云えば何度もふりだしに戻される日々。
今も変わらぬ無一文でとても約束の場所には行けません。
そんなとき通りかかった一人の老女。
信吉の話を聞き、きっとそのお友達はあなたに逢うのを心待ちにしている。会いにいくべきだと説得し、身なりを整えるお金を渡し、送り出します。
啓一は立派な身なりで現れた信吉に心底から喜び、お互い生きててよかった、頑張ってよかったと祝福。
家族を紹介しますが、啓一の義母を見て、信吉はハッとします。
彼を助けてくれた老女は啓一の義母だったのです。そして・・・。
『愚兄愚弟』『人生双六』に比べ、知名度が低いですが、私が一番好きな作品です。
一級建築士をめざす青年・間文太郎。
入社当時は設計担当でしたが、社長令嬢の淳子との仲に嫉妬した上司の嫌がらせで立場が危うくなり、現場監督の石原(藤山寛美)に引き取られました。
今は現場職人として働きながら勉強を続けていますが、石原(藤山寛美)はなぜか文太郎にだけ殊更厳しくあたります。
もともと仕事に厳しい石原ですが、頼りがいがあり、人情味のある人物です。
文太郎の父は石原の大恩人だったのに・・・??? 周囲の人も訝るばかりです。
或る時、石原は文太郎にとある設計図を書かせます。
現場はどうすれば仕事しやすいか、より使いやすくするにはどうすればいいか?
次々と出てくるアイディアは、すべて文太郎が現場で身体に叩き込んだものでした。
石原が依頼した設計図こそが、文太郎を一本立ちさせる第一歩、『愛の設計図』だったのです・・・。






