朗読CDは弊店の柱の一つですが、近ごろ人気が高いのが、文豪・夏目漱石の随筆/エッセイです。

随筆とエッセイは同じものという人もおられますが、微妙なニュアンスの違いがあると云われます。
随筆は構成やテーマに捉われず、気ままに自身の体験や感情を綴ります。
一方エッセイは、テーマや筆を執る理由があります。だから感情だけでなく論理的な考察や分析も伺えます。
『枕草紙』や『徒然草』は詩的で文学的ですが、村上春樹さんや内田樹さんの文章は、思想や社会についてわかりやすく綴っています。
両者を比較すると随筆とエッセイのなんとない違いを感じられるかもしれません。
夏目漱石の随筆の特徴は、軽妙洒脱、堅苦しくなく、ユーモアや皮肉を交えた読みやすい文章です。
同時に、知的で観察眼が鋭い方だったようで、ハッ!と気づかされたり、なるほど!と頷かされることもしばしばです。
漱石先生と縁側や教室などで語り合っているような印象を受ける方も多いのではないでしょうか。
話題は、社会や日常生活、人間心理への感想が多いですが、先生の興味が赴くまま、西洋思想や文学、個人主義や文明論に話が及ぶこともあります。
有名な『私の個人主義』などは、漱石自身の思想や価値観が短文で展開され、文学評論として愉しむ方もおられるようです。
私見ですが、『こころ』『それから』など大人向けの人間観察&心理描写を楽しむ作品と、『吾輩は猫である』『坊ちゃん』など文体も物語もどこかリズミカルでユーモアや皮肉を楽しむ作品があるように思います。
先生の随筆はどちらかと云えば後者、文章のリズムや語感、言葉の選び方の巧みさ、ユーモアや皮肉、独特の観察眼、+隠してもしっぽが出てる思想性を愉しむ趣向です。
漱石先生の随筆を読むと、人間と云うのはなんと進歩せず同じところをグルグル回っているのか?
でもどうして、それがこれほどまでに愉快で憎めず、愛おしいのか?
そんな思いに駆られます。
同時にリズムがよくて読みやすく、人を不快にさせない程度の皮肉=程よい香辛料で味付けされた日常のちょっと洒落た料理のような文章に、素敵な歌に初めて出会ったときのようなお得感、見つけた!感をおぼえます。
漱石先生の随筆シリーズ、全4種類。
随筆もまた朗読者によって異なる横顔を見せてくれます。
ぜひ一度お聴きください。
・初秋の一日
・ケーベル先生
・僕の昔
・余と万年筆
・自転車日記
・私の経過した学生時代
・落影
・文士の生活
・処女作追懐談
・元日
・変な音
・手紙
・文鳥
・夢十夜
・手紙
・点頭録
・琴のそら音
・余と万年筆


