昨日、琵琶盲僧(琵琶法師)のDVD発売をご紹介させて戴いた。

筑前琵琶『平家物語』
ふと考えると『琵琶』という楽器がイメージできない、という方もおられるかもしれません。
『琵琶』は右の絵のような楽器です。果物の枇杷と似ているので、この名がついたとも云われます。
もともとは古代ペルシャ(現在のイラン)の『ウード』がシルクロード経由で中国にわたり、奈良時代に仏教とともに日本に普及したと云われます。
奈良の正倉院に日本最古と云われる『螺鈿紫檀五絃琵琶』が所蔵されています。
弦を撥や指で弾いて音を出す撥弦楽器で、木製の丸い胴部は中空構造となっており、音を反響させる共鳴胴の役割を持ちます。
背面が丸く湾曲した独特の形状で、子の形状ゆえに柔らかく繊細な響きを生むと云われます。
棹から共鳴胴に張られる弦は4~5弦。2本一組の複弦で張ることで音に厚みを生み出します。
棹は胴部に比べずいぶん細いので、『柱(ジ)』と呼ばれる可動式の駒や指の抑え具合で音階を調整します。
演奏は撥=大型のへら状の道具で強めに弾きます。
昨年の大河ドラマ『光る君へ』で吉高演じる主人公のまひろ(後の紫式部)が時折に夜中に物思いに耽りながら、奏でていた楽器が『琵琶』になります。
日本の楽器の多くは曲調や、音楽ジャンルに合わせ、細かく枝分かれし発展しましたが、『琵琶』も同様にジャンルや地域によって異なる発展を遂げました。
例えば下記のような種類があります。
雅楽で使用。リズムを支えるベースのような役割で音色はおおらかで柔らかい響きです。
▷ 平家琵琶
『平家物語』を琵琶の弾き語りで聴かせる琵琶法師。
怪談の『耳なし芳一』などで知られますが、この通称『平曲』の伴奏楽器として使用されます。
やや大きめで語りに合わせた重厚な音色を奏でます。
▷ 盲僧琵琶
昨日、紹介した永田法順師が用いられる琵琶です。
法要や仏教儀式などで経文の読誦や、釈文などで使われます。
この盲僧琵琶が、薩摩琵琶や筑前琵琶の源流とも云われます。
▷ 薩摩琵琶
武士の嗜み=教養として発展しました。
士風教育に用いられ、軍記物語の語りなどに使われたと云います。力強い音色が特徴です。
剣豪・宮本武蔵が好んで引いたという逸話も残ります。|
▷ 筑前琵琶
山崎旭萃や上原まりなど女性演奏家がよく用います。
柔らかく優美な詩情溢れる響きが特色で、明治以後に福岡を中心に発展しました。
琵琶の弾き語りから歌曲へ、琵琶の可能性を拡げた楽器です。
『琵琶』の楽器としての魅力を世界的に発信したのは、やはり1967年発表の武満徹『ノヴェンバー・ステップス』だと思います。
この曲は、琵琶と尺八のソリストとオーケストラの競演という形式をとります。
『融合する』というより、『対峙する』という表現がよく合う楽曲です。
琵琶や尺八はもともと調性を持たないので、不安定さやおさまりの悪さを持っています。
即興演奏や音の空白部分を活かすこともあり、骨組みのしっかりした西洋オーケストラとは相容れない部分があります。
武満徹はこれを無理に融合するのではなく、時に共鳴し、時に譲り合い、時に対抗するように、まるで東西文化が会話をするような音楽に仕立てました。
『ノヴェンバー・ステップス』の反響は凄まじく、後に雅楽と西洋オーケストラを融合した『秋庭歌一具』などの誕生にもつながります。
ペルシャ、中国、日本、そして西洋へ・・・静かに、しかし確実にファン層を拡げる『琵琶』お音色をぜひお楽しみください。


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