聖橋~湯島聖堂ブラリ

湯島聖堂 つれづれなるままに
湯島聖堂

所用で東京出張。
商売柄、あまり関西を離れる必要もなく東京は半年以上ぶり。
JR御茶ノ水駅を降りると、1時間少し約束より早めについた。
駅前の『聖橋』は歌にもよく登場する。

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一番に思い出すのは、あさみちゆきさんの『聖橋で』だろう。
あさみさんはが作詞家・阿久悠の最後の秘蔵っ子と呼ばれた歌手だ。
ギターの弾き語りで、フォークと演歌の中間あたり、なんか胸に残る曲を聴かせてくれる。
少しの間、結婚、出産で活動を控えておられたが、近頃また活動を活発化されておられる。
この『聖橋で』も阿久悠さんが作詞、杉本眞人さんが作曲を担当している。
(本記事末 動画あり!)

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また、さだまさしさんの『檸檬』も聖橋が舞台となっている。

この曲のベースは、梶井基次郎の小説『檸檬』。
病気や借金で苦しむ主人公が、思わず買ってしまった色鮮やかな檸檬。
彼は、昔よく通った京都・河原町の丸善書店に立ち寄るが、かえって重苦しさを感じてしまう。
積み上げられた画集の上に、鮮やかな檸檬を置き、不思議な解放感を覚えつつその場を立ち去る、そんな話だ。

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さださんの『檸檬』の歌詞に、聖橋からレモンを放る描写があり、それがまるで画集の上に檸檬を置いて立ち去る主人公とシンクロする。
この『檸檬』という曲の最初に、『湯島聖堂』で彼女が檸檬を空にかざすシーンがある。
青春時代にこの付近で暮らした人にはたぶん、たくさんの想い出を想起する歌なんだろうと思いつつ橋を渡ると、右手にその湯島聖堂が見えてきた。
すだじい

すだじい

時間もあることだ。立ち寄ろう。
鬱蒼とした森の中になんともいえぬ存在感のある建物が見える。
門を入ると、右手に巨木。
『すだじい』と札にある。なんか渾名かななど思ったが、後で調べるとブナ科シイ属のれっきとした植物の名称だった。
よく小説などでシイの実が登場するが、この木のドングリのことらしい。
左手には主殿である大成殿、右手には長く大きな階段が下っている。
階段の付け根に鮮やかな紫陽花。
雨上がりの紫陽花にレンズを押し当てるようにして写真を撮るおじさん、納得の1枚は取れ

この湯島聖堂は、元禄文化と生類憐みの令で有名な五代将軍・徳川綱吉により孔子廟として建立された。
綱吉は学問好きな将軍で、儒学を殊の外信奉した。
生類憐みの令は『儒』の行き過ぎから生まれた法だったと云われている。
湯島聖堂は、その後『昌平坂学問所』として発展。
関東大震災で焼失後、1953年に再建された。
中には世界最大級の公私銅像が安置されているそうだが、今回は残念ながら閉館していた。

階段に座って昼飯のパンをかじっているおじさんがいたが、彼もさださんの『檸檬』を聴いたのだろうか。
それにしては太い指だな、なんて一人ほくそ笑んだ。

そろそろ時間・・・やだなぁと思いつつ、湯島聖堂を後にした。


あさみちゆき 『聖橋で』